亜細亜へめぐり紀行04

2011年12月12日

カントーでは時間がなくて見つけられなかったけれど、ここミトーでは、無事銀行で、日本円からベトナムドンへの両替に成功。ドルを経由するよりも、やっぱりレートがいい。懐の心配がなくなったところで、ようやく朝飯にするかな。
屋台でも、と思って通りを歩いてみるけれど、なぜかサンドイッチにありつけないので、諦めて川べりでコーヒー。
朝から暑くなってきたのでアイスコーヒーを頼んだのだが、そばにいたお節介な欧米人が、あれは甘すぎてterribleだと、勝手にホットコーヒーに注文を変えられてしまう、という。親切にもほどがあるよな、もう。

ベトナムの宗教といえば仏教や道教が主流らしいけれど、実は変ちくりんな新興宗教もお盛んなお国柄であって、そのうちのひとつ、ココナツ教の総本山がミトーにある。教祖は世界平和を唱えて、ココナツだけを食べて死んでいった人らしい。教祖が死んだあとは、残念ながら教団は解散し、今はその跡地だけが残るという。これは行ってみたいじゃないか。

ココナツ教の寺跡は目の前のメコン川の中州にある。そこへ行くボートの値段交渉がなかなか折り合わず、訪問を諦めかけたところ、バイタクのおじさんが5$で行くという。
オーケーしてバイクの荷台に乗ると、メコン川にかかる橋を60kmでぶっ飛ばし、中州に入ると道なき道を行く。
ココナツ教はもう解散させられているけれど、観光地として復活し、境内にはココナツキャンディーの工場やら、鶏肉を釣竿で垂らして遊ぶワニ釣り園やらが併設されていて、なかなか楽しい。

午後は、ミトーのバスターミナルからホーチミンへ。バス代が1.5$で、えらく安いな、と思ったら、初めて乗るベトナム地元民用のバスだった。高くてもいいからVIPバスとかないのか、と思ったけれど、のんびりとしたバスターミナルには、そんな空気は微塵もない。そして今日も朝食昼食ともに食べそびれる。本日も腹減った。

あちこちに停まって時間がかかると思いきや、ローカルバスは意外とすいすい走り、ひと眠りして気がつくと、ホーチミンのバスターミナルまであと15kmほどのところまで進んでいた。
大都市にもかかわらず、ホーチミンについてはめずらしく宿情報が集まらない。それでは、安宿街に行き、足で探す、という昔の杵柄をひさしぶりにどっこいしょ、と持ち出してみるか。

タクシーでホーチミンの有名な安宿街、デタム通りへ。ホーチミンにはいくつもタクシー会社があるけれど、タバコを一服しながらちょいと調べれば、すぐに評判のいい会社が分かる。評判がいい、とはサービスなどではなくて、ターボメーターがない、おかしなところに連れていかれない、という大変基本的なお話。バックパッカーにとって、スマホは必需品になってきたのかもね、と思う。
走り出した車窓には、韓国コスメの店を見かける。本当にどこの国へも進出してるんだな、と実感する。ミシャやハンスキンが、そのうち資生堂並みのブランドになる日がくるんだろうか。

さて、デタム通り。客引きがわらわらと寄ってくる。何だか懐かしい光景だ。メインストリートにある、小綺麗な「Anan Hotel」で値段を聞いてみると、22$とのこと。少し高め。客引きに連れられて行った裏通りの「Thai Nhi Hotel」は、WiFiとエアコン付きで10$。じゃあここでいいか、と、荷物を部屋に運ぶ。
ところがチェックインしたとき、宿代のお釣りを誤魔化されそうになる。抗議して取り返してはみたものの、今日のところは我慢するとしても、明日以降は是が非でも宿を変えたい。
あらためて、再度宿探し。バックパッカーの流儀としては、これは客引きに乗った自分が悪い。
ほどほどのホテルがバルコニー付きで17$という。このあたりで手を打つか、さっき見た「Anan Hotel」クラスまでランクを上げることにするか、明日までに考えておこう。

せっかくホーチミンに来たからには、やっぱりベトコントンネルは訪れておきたい。ついでに、ベトナム面白新興宗教のお寺も見に行きたいな。
安宿探しに失敗した気を取り直して代理店に入り、ツアーの値段を尋ねてみると、ベトナム戦争のクチトンネルとカオダイ教を廻るツアーが、だいたいどこも8$ていど。ツアーへ独り参加、は切ないが、安く行きたいならそれしかないようだ。

遅い昼食を、と、ふらり入ったカフェは少し高級なようす。焼飯とアイスコーヒーで6$。焼飯はなかなか上品な味。
この店には日本語勉強中のウェイトレスさんがいて、美味しいですか?ありがとうございます、などと、僕に自分の日本語が通じるかどうか、しきりに話しかけてくる。じゅうぶん通じますよ、と答えると、はにかんだベトナム美人の笑顔を浮かべる彼女。自分もこれくらい外国語が喋れたら、と忸怩たる思いになる。

焼飯を食べ終えてから、暇つぶしに水上パペットショーを見に行く。このショーも6$とのこと。
しかし、劇場に辿りつくまでの、ベトナムの道路横断は本当に大変だ。大量のバイクが道を埋め、おまけに交通マナーの悪さはそうとうのもの。バンコクのそれに比べても、道路横断の難易度ははるかに高いな。今のところ、訪ねた街の中でも、一番ひどい交通マナーの街だ。
そんな喧騒の大通りから、欧米人のおじいちゃんおばあちゃんが、たぶんツアーと思われるシクロに乗って、劇場に到着した。トシを取ったら、僕もこういう旅行スタイルになるのかな、と考えてみる。

水上人形劇自体はとても面白かった!水の中からどうやって人形を操るのか、じっくり見ていてもいまひとつからくりが分からない。熟練の技量に魅せられて、たまには観光ショーもいいもんだね、と満足して劇場を後にする。

ちょうどチキンライスの名店がこの近くにあるというので、行ってみる。具は茹で鶏、ローストチキンのどちらかを選ぶ仕組み。そして、冷たいおしぼりが最初に出てくる。後で勘定を見ると、しっかりおしぼり代が取られていた。この後ホーチミンのあちこちの店で、同じようにおしぼりが出てきたので、ようは日本でいうところの、居酒屋の付き出しみたいなものらしい。

宿のそばに戻り、路地裏の露天珈琲屋でアイスコーヒー。氷もたっぷり入っているけれど、それくらいでは腹を壊さない、立派なアジアの子供です。
ここいらは旅行者が多いという事もあり、ビラ配りの勢いもすごい。日系の旅行会社は日本人向けにパンフと地図を配ったり、マッサージ屋がひたすらビラを渡し続けたり。そのビラに吸い寄せられて、ふらふらマッサージ屋に行く。結果は、いまひとつ。どうも客引き運がない一日だった。

2011年12月13日

午前中はいろいろと用事を済ます。長旅の日にも、用事で埋まる日が出るってものだ。洗濯物を出す、夜行列車を予約する、明日のツアー申し込み、そして宿替え。

結局次の宿を22$の「ANAN 2 Hotel」にしたら、そこはエレベーター完備、カードキーに親切なホテルマンがついてくる。ホテルのランクを上げて心から快適を満喫しているけれど、ホーチミン出たらまた安宿生活だな、と思う。
たいそう部屋が過ごしやすく、ホテルのベッドに根っ子が生えそうだ。これではいかんな、と、市内観光にでも出かけることにする。

デタム通りのそばから路線バスに乗り、中華街のチョロンまで。車内でお釣りをもらい、はじめてベトナムの硬貨を見た。通貨が何万ドン単位で動いているので、路線バスくらいしか硬貨をみることはない。
道路状態の悪いホーチミンとはいえ、さすがに信号はそこらじゅうにある。その代り、信号の色が意味するところが、日本のルールとは違う気がする。
赤は動くな危険、黄色は止まれ、青は注意しろ。そんなところじゃないかな、と、地元っ子の交通マナーを見てため息をつきたくもなる。『オールグリーン』という言葉、この国では通用しないんじゃなかろうか。

チョロンでは市場を見て、道教寺院なども訪れて、次は中央郵便局を見学。この郵便局はフランス植民地時代に作られた見事な建築で、内部は一見の価値がある。まるでヨーロッパの古き良き時代のようだ。
しかし、一歩外に出るとそこはベトナム。この街はほんとうに排気ガスがひどい。こりゃ鼻毛も伸びるだろうな。鼻の下が伸びるような、アオザイ女子高生には出会わないというのに。

旅に出た時から痛みが気になっていたサンダルを入手しようと、ホーチミンで一番新しいデパート、Vincom Centerへ。ここにはビルケンストックのオフィシャルショップがあり、ちゃんとした正規品を手に入れられた。日本で買うよりも1,000円ほど高いかな。
バンコクならもう少し安く買えるのかもしれないけれど、ビルケンのサンダルは馴染むまで時間がかかる履き物なので、早めに買ってしまう。このデパート、価格帯が高めなだけに閑散とはしているが、ブランドの揃いは悪くなかった。

今日は少し早めの夕食で、デパートのそばにあった、ガイドブックに掲載されている、フォーの有名店に入る。
具だくさんの全部入りフォーと、副菜に揚げ春巻。ここのフォーは、確かに屋台や食堂とは味が違う。特にスープの出汁が秀逸で、ぜんぶ飲み干してしまえるくらい。
腹もくちくなってからは、香港式マッサージ、露天のアイスコーヒーと相成る今夜。
露店でのんきにお茶などしているのは、9:1の割合で男。数少ない女性客も、男と一緒に来ている人だけ。どこの国でも男ってやつは、なんて勝手な感想を抱きつつ、僕もその一員となり、低いプラスティックの椅子に座り路上を眺めながら、コンデンスミルクがたっぷり入った、甘いアイスコーヒーを啜る。
ベトナムの夜には、このコーヒーがよく似合う、と思う。

2011年12月14日

今日は朝から観光ツアーにでかける。予約した代理店は、ベトナムで一番有名なシンツーリスト。
ここのサービスは先進国以上。予約したときに、座席指定されたクーポンを渡されたことにも驚いたのだけれど、当日にチェックインすると、乗り込むバスの番号まで指定されたボーディングパスを渡される。たかが、といっては失礼だけれども、8$ていどの観光ツアーがここまでシステム化されていることに、同じシステム屋さんとして感動する。

午前中は、巨大な眼がシンボルになっている、一風変わった新興宗教、カオダイ教の総本山を見学。なかなかさばけた宗教で、礼拝中の信者の写真を撮ってもいいという、わりに寛容な姿勢。教祖だけでなく、李白やヴィクトル=ユーゴーまでも聖人に列している宗教だからかな。何でもありなんである。

昼食に立ち寄ったドライブインで、「Fried fish tomato sauce」を注文したところ、自信たっぷりに持ってきたのはただの野菜スープ。ウェイターさんが、僕が指差したメニューのベトナム語を確認して、はじめてあちゃーという顔になる。おかげで僕だけご飯の到着が遅れ、大慌てでかきこむ羽目に。

午後はホーチミン観光の白眉、ベトコントンネルへ。まずはここクチでのレジスタンス活動についての授業を受けるわたくし。ベトナム人の誇りともいえる歴史だ。

ゲリラ戦の様子を再現したジオラマや、いくつものトラップを見学した後、最後にガイドさんが「トンネルに入りたい人」とツアー参加者に訊く。
せっかくの機会なので、迷うことなく手を上げて中に入ってみたが、延々中腰の高さしかないトンネルを移動するのは、かなりきつい。たった数百mだけど、音を上げた。あんなところで戦争できるなら、そりゃアメリカ軍にも勝てるよな、と納得。
疲れきって穴倉を出た僕は、おとなしく米帝のコカコーラで、喉を潤すことにする。

観光を終えてバスはホーチミン市街に戻ってきた。が、ちょうど夕方のラッシュアワーにぶちあたり、ものすごい渋滞。前にも痛感したけれど、この国はほんとうにバイクが多すぎる。公共交通機関が発達していないのも原因なんだろう。

ベトコントンネルやバイクの洪水、今日はそんなベトナム人のパワーにあてられて、晩は寿司と唐揚げにする。久しぶりに食べる日本食はやっぱり美味い。里心がついてしまう。

2011年12月15日

ホテルをチェックアウトし、サイゴン一の規模を誇るベンタイン市場へ。一歩足を踏み入れた瞬間から、英語日本語取り混ぜた客引きばかりに囲まれ、ただ疲れるだけの場所だった。その代わりなんでも揃っている。

さてお昼を、と乗り込んだタクシーで、久びさにボラれた。あっという間に料金が跳ね上がるターボメーターである。安心して乗れる、とネットやガイドブックに書いてある会社以外は、やはり乗ってはいけないのだ。
ここらへんのタクシー事情は国ごとに千差万別で、タイは安心して乗れる。マレーシアもだいたいそうだ。危ないのがインドネシアとここベトナムで、まさに発展の度合いに雁行して、タクシーの安全度も上がっていく。
ともあれ、小洒落たカフェでランチにする。と、あっという間に支払いは10$オーバー。しかしながら、こんなところまで来て、本格的なズッキーニのソテーやら、鶏胸肉のローストが食べられるとはね。

ホーチミン滞在は今日が最終日なので、戦争証跡博物館、大聖堂、農場直送のプリン屋さん、サイゴン川散策と、だらだら脈絡なく観光を。
最後はタクシーで宿に戻る。荷物を受け取って、さあ、また移動が始まる。次は久びさに鉄道の旅。
サイゴン駅はずいぶん薄暗く、停車しているのもずいぶんとくたびれた寝台車。予約したのは一番値段の高い寝台なのだけれども、これで一番ときたなら、下等寝台はいったいどんなものなんだろう。と思う。

車内をうろうろして、車両ごとに備え付けてある給水器の写真を撮ろうとしたところ、女車掌に何やら怒られた。そういえばベトナムも一応共産主義国家で、共産主義国家の車掌さんがエバっている、というのは本当の事なんだな、とへんな関心をする。
列車が走りだすと、ノイズだらけのスピーカーからは、ベトナム語の歌が流れ続けている。このあたりも、いっぷう変わった鉄道だ。

スピーカーからは雑音に近い音楽が流れ、4人コンパートメントの中では、4人中2人が大声で電話。ベトナム人の印象は、タイ人のいい加減さと中国人の図々しさを足して2で割ったような感じがする。
うるさくて眠れやしない、と思っていたけれど、いつの間にか眠ってしまった。

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