1997/10/06 7日目

 ゆうべの雨はひどかった。スコールというわけでもなく、日本の梅雨のように、しかしそれより激しく降り続くのである。おかげでせっかく直してもらった電気もまたとまってしまった。

 今日はこの島を去り、バンコクに向かう予定である。「この島一番のにぎやかさ」とガイドブックに記されたビーチだったが、素朴で穏やかな、そんな風が吹くよいところだった。
 正午ちょうどに島を出るボートには、行きと同じようにはしけから乗り移らねばならない。はしけというよりほとんどいかだに近く、乗り込んでまもなく高波にあらわれ、服もカバンもびしょびしょ。全身塩くさく成り果てて、対岸の陸地、バーン・ぺーに向かう。

 行きは旅行会社のタクシーで来たのだが、帰りは普通のバスに乗ることにする。バンコク行きのバスといっても公営のもの、それより料金がやや高いかわりに快適な私営のものなど数種類あるようだが、ここは一番安い公営バスを探す。旅行代理店などで尋ねれば「自分の会社のバス」を勧められるに決まっているので、道行く人に「ロット・ファーイ(註:タイ語でバスの意)?バンコーク?」と声をかけまくる。さすがに「ロット・ファーイ」は通 じなかったが、現地の人も「バンコーク」と微笑みながら、指先でバス・ターミナルを教えてくれる。着いたのはバス・ターミナルというほどのものでもない、駐車場に毛の生えたようなものである。
 バスはちょうど、エンジンを震わせながら今にも発車するところだった。「Ticket?」と訊かれるが、持っていないと首を振ると、まあいいか、というかんじで車内に招き入れてくれた。車掌に金を渡し、後ろの予備座席のようなところに座らされる。背もたれがリクライニングしないので、座りにくいことおびただしい。
 たまたまエアコンバスだったので、長旅も暑さだけからは解放されている。隣の席までもたれて眠っていたが、途中から乗ってきた女の子に席を譲り渡し、また倒れない椅子での行程に逆戻り。しかしそれでもまだましなほうで、全ての座席がふさがると、折りたたみ椅子まで取り出され、車内は立ち席も出始めた。

 舗装はまずまずで、バスは快調にスピードを上げる。なだらかな草原が広がっている。果 樹園らしき、整然と植えられた林も見える。静岡あたりの光景のようだ。距離的にも、確かにバンコクとこの辺りの関係は、東京と静岡のそれに似ている。造成中の工場団地も車窓をかすめる。

 3時間強でバスはバンコク・東バスターミナルに到着。バンコク市内に入った途端渋滞に巻き込まれたが、バスターミナル自体が街の端にあるので、さほどのこともない。問題はこれから市内に入るときだろう。
 市内バスに乗り換える前に、そばの屋台でビーフンを食べる。よく考えたら、朝に食べたきりである。ずるずるすすっている最中に、前の屋台の屋根が倒れ、カバンに調味料が降りかかってきた。エキゾチックなにおいになったそれを肩に下げ、目的のバスに乗ってバンコク随一、ひょっとしたら東南アジアでも最大の安宿街、カオサン・ストリートに向かう。
 市内バスはどこで停まるのかわかりにくいし、こちらもどこを走っているのか推測の域を出ないので、結局乗り過ごして歩く羽目になる。以前泊まったことのある「Top Hotel」にチェックイン。心なしか、前回よりも愛想が悪い。3泊分で720バーツだった。

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