夜明けのメリー・ペシミズム

 夜明けに凝っている。凝っているという言い方じたい文法的におかしいのだけれども、僕の気分もまた変なので、ちょうどよいのであろう。

 静寂の中におかれていると、筆舌には尽くしがたい気分になる。自分の存在が、研ぎ澄まされた感覚となって知覚できる。なんだか、泣けてくる。一日のはじまり、という躍動感あふれる時間にも関わらず、世界は止まって鳥がさえずる。そうなんだ。僕もたまに声を出してみる。

 夜明けの発声の心地よさ、世界で唯一の実存在になったかのようなこの高揚感は、鳥と僕の他に誰がわかるんだ?

 泣けそうになったりたかぶってみたり、僕はこの静かな場所で、自我を空気に曝している。もし何者かが襲ってきたら、すぐにつつかれて血があふれるような柔らかい内蔵を、さらけ出している。
 でも、誰もここには辿りつけない。

 夜明けなのだから。

 普段抑え込まれていた感情がどこからかはいずり出てきて、自分だけの時間の中で僕を操る。「過去」と「孤独」が今のキーワードなのだけれども、今もこうしてキーボードを叩きながら自虐的な空想に酔っている。

 夜明けに起きていることは、僕にとって最上のマスターベーションだ。
 背徳的な快楽が、他の全てから僕を切り離し、ただこの夜明けの中で。常に「未来」あるいは社会との関わりで生ずるたぐいに自意識は縛られているのだけれども、この時間だけは僕を自由にする。夜ぁ駄 目だ。あいつは重っ苦しい奴なんだ。しかたがないから、みんなテレビのチャンネルがつけっ放しなんだろう?

 太陽と月が同時に見えるのは、二人の女にすっ裸にされてるようなもんだ。僕は視線を気にしながら、それでもその視線が心地よいから、もだえてみせる。

 たまに、振り返ってみる。
 誰かが俺を見ているような気もするし、何も見えない時もある。

 夜明けなのだから。

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