夢日記:カレー屋さん

夢日記:カレー屋さん 唐突な話なのだけれども、母がカレー屋を開くことになった。とりあえず試験的に営業しているというので、とにもかくにもおっとり刀で駆けつけた。古びたビルの高層階で、窓からは雨に煙った濃尾平野と揖斐川が見える、そんな立地だった。
 店にはアドバイザーをしてくれている青年がいて、試作品のカレーを食べている。カレーの味も気になったけれど、その前に、安っぽい内装がひっかかる。色画用紙に書かれた安っぽい花のイラストが、ビニールにくるまれて画鋲で壁に留めてあったり、ライトカバーが朱色の花を模したものだったり、おそらく内装自体が前の店のままなのだろうということが容易に推測できた。
 「ねぇ、内装これでいいと思います?」
 と私は青年に話しかけた。「うん、ちょっと暗いかなぁ」程度の返事しか返ってこないので、私は彼に失望し、横にいた弟に内装改善案を話し出した。
 店にはやがて叔母と従姉妹が遊びに来た。従姉妹が「はい、これうちの母から」と金一封を差し出す。「この間のお礼だからって、・・・」曖昧な言葉を並べる従姉妹に、「いいよ、そんなつもりでやったんじゃないから」と受け取りを拒否した。
 「お金がないわけじゃないし。服買わないから」
 「そうなの?あたしは服の買い過ぎでお金ないよ。5日に一回ぐらい服買うから」
 「ははは、俺はここ一年で一着だ」
 横から母が口を出し、「そうなの?私も一回しか袖を通したことのない服がタンスの中にあったりするけど?」と割り込んだ。それをしおに、みんなで階下に降りる。父や祖父母の姿をはじめとして、親戚が集まっている。何だかいい気分になるじゃないか。そんな光景だ。霧雨に煙った駐車場と目の前の田圃は決して晴れやかな状況とはいえなかったけれど、僕は何だか安らかな気持ちになった。
 誰だかが、「ねぇ、この領収書でいいの?」と話しかけてくる。それはタクシーの車内で発行される機械印字の領収書で、受け取ってみると、「××運送:某女性A子サマ」と書いてある。誰だ?A子って。
 私は父にその領収書を見せた。「ねえ、これはまずいんじゃないの?」
 父は曖昧な顔をして頷き、そばに止めたハイヤーのそばで談笑している税理士さんに近寄り、尋ねようとしてなぜか途中で立ち止まる。代わりに私がその領収書を手に、太い眉毛が特徴的な、太った「いかにも」という風貌の税理士を追いかけた。今にもハイヤーが走り出すところで、税理士が乗ったハイヤーの後部座席のドアを開けて、「おい!俺と代われ!」
 叫んで弟を無理矢理降ろし、代わりに僕がその席に収まった。
 「無茶なことをするねぇ」
 走り出した車の中で税理士が僕に声をかけてきた。運転手:前部座席の税理士:後部座席左側の助手らしき男:後部座席右側の私という配列。
 「いや、この領収書なんですけど、この宛名では受け取れないですよ。こんなのでいいんでしょうか?」
 「いや・・・まあ・・・ねぇ」
 「うちもこの領収書を経費で落とさなきゃいけないんですから、しっかりとした領収書じゃないとお支払いできませんよ」
 私は税理士に詰め寄った。その剣幕に税理士は相当気分を害したらしく、
 「君、知らないだろうけど、あの店のチェックは先輩(註:僕の叔父、母の兄)がやられるそうなんだよ。私は最終的なチェックをするだけでね、後は全部先輩がやられるっていうから。そんなこまかいことをいちいち私に言われてもねぇ」
 嫌みな鼻息を一つ、それで税理士の弁解は終わったらしい。
 なんだそのいいぐさはだいたいおまえがつかったりょうしゅうしょだろうがようだれがみるとかそういうもんだいじゃなくておまえのそのうさんくさいたいどがきにいらないんだおれは
 一瞬形式的に言い負かされてしまった私の頭の中には、理性的な思考として言葉が浮かび上がってこず、そこに会話の間隙が生まれた。
 今まで黙っていた、私の隣の助手らしき男が僕に話しかけてきた。
 「まぁ、君の気持ちも分かるけどここはおとなしくしていなさいよ。まだ17だからさ、しょうがないんだろうけど」
 大して年は違いそうもない彼に、そう人生の年輩風を吹かせられて私は逆上した。
17歳って何のことだ?誰と俺を勘違いしていやがるんだ?
 火炎瓶にガソリンがぼっと灯るように激した。ハイヤーの座席に左足をかけると、私は男の胸ぐらをつかみ、罵声をあげて殴りかかろうとした。怯えきった狐のような怜悧な顔が視界に飛び込む。そのまま右足で彼の顔面を踏みつけ、窓ガラスに押しやる。抵抗すらしない男。さらに私は大声を上げ、彼に一撃を加えようとした。
 税理士は焦ったらしく、助手席から後ろ向きに私たちを止めようとする。彼は両の手を伸ばし、私と男の睾丸を握ろうとする。なるほどね、それでお互いの動きを封じあげようというわけか。
 私は税理士に睾丸を握られるより先に、私の睾丸を探る彼の指を逆にひしぎ、彼の動きを止めようとした。さすがに見かねた運転手が車を路肩に停め、後部座席のドアを開いた。好都合だ。路上で決着はつけてやる。

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