棹差す寄る辺

夕べの驟雨に濡れた朝のホームに立ちながら、こうしてふと、南海の小島で読んだ『グレート・ギャツビー』のくだりを不意に思い出す。
僕はバリの外れの人気が無い海辺で『異邦人』の文章が太陽にさんさんと照らされていたことも憶えていて、8年も昔のクアラルンプールの薄暗いデパートのフードコートで桑田佳祐のマレー語カバー曲に、コーラ片手で耳を傾けていた刹那がついさっきだったように、懐かしく浮かび上がる。
雨上がりの朝、まるで濡れそぼった小石みたいに在る記憶の断片じたいが、絶えず流され続ける僕が棹差す寄る辺、としての旅なんじゃないか。
と考えるうちに、電車は大阪駅に滑り込む。

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