宿泊予約サイト分析-2 一休とベストリザーブのニッチ戦略

宿泊予約サイト分析-2 一休とベストリザーブのニッチ戦略表題のとおり、主要5サイトの中ではもっとも小粒であり、かつマーケット特化戦略を取る一休とベストリザーブについて考察してみる。

前項で推定したとおり、両者の予約室数ベースでの差はそれほどない。が、両者の成長性評価についてはかなり大きな差があるといってもよいだろう。

■一休
2005/8/15終値での時価総額:716億円
売上高:12億4000万円
経常利益:7億3000万円
※いずれも同社IR資料より

■ベストリザーブ
ライブドア買収時の買収金額:12億円
売上高:2億1000万円
経常利益:4000万円
※いずれもライブドアIR資料より

これは両者の位置するマーケット・ポジションに依存している。一休は平均室単価22,000円の高級ホテルが対象(同社IR資料より)であり、かたやベストリザーブはビジネスホテル主体のため、一般的に室料×手数料率である1予約あたりの売上に大きな差が生じる。これを数字にしてみると、

一休の1予約あたり売上=1,540円 {室料:22,000円}×{手数料率:7%}
ベストリザーブの1予約あたり売上=330円 {売上高:2億円}÷{予約室数:60万泊}
(ちなみにベストリザーブの平均室単価は、330円÷5%で6,700円前後と推定される)

と、5倍近い数字の開きが出る。両者の予約室数は大差ないにもかかわらず、売上高と経常利益にギャップがあるのはまさにこのマーケットの違いによる。システムコスト的には、シティホテルとビジネスホテルの予約に差があるわけもなく、両者程度の規模ではコスト吸収力の違いが財務指標にあらわれてしまう。これは、ベストリザーブと同じくビジネスホテル予約が主体でありながら、業界のガリバーとして君臨する楽天トラベルと比較すれば一目瞭然で、楽天トラベルは客単価が安くとも大量のディールをさばくことによりコストメリットを出しているのだ。

つまり、ベストリザーブ=ライブドアが現状の戦略で進むかぎり、楽天トラベル並み、とは言わぬまでもせめて現状の5倍(=一休と同レベルの売上高確保)の予約室数を叩き出さなければ生き残りは厳しいのではないか。これは業界2番手に位置するじゃらんnetと同規模の数字であり、ポータルとしての顧客誘因力に乏しいライブドアでは、簡単な実現は困難であろう。

そこで、ベストリザーブは室単価の高いレジャー需要の取り込みに血道を上げている。

ベストリザーブ、宿泊施設側のシステム利用料無料キャンペーン(INTERNET Watch)

ベストリザーブは28日、同社と加盟契約を結んだ宿泊施設のシステム利用料を値引くキャンペーンを実施すると発表した。具体的には、2005年の実績額をもとに、それを超えた分の手数料については毎月無料にするキャンペーンを7月より2006年1月まで実施する。
(中略)
今後の展開については「livedoor利用者では、ベストリザーブが従来フォーカスしてきたビジネス宿泊予約よりも、レジャー目的の宿泊予約ニーズが高い。そこで、今秋をめどにライブドアのサービスの1つとして、レジャー宿泊予約サイトを新たに開始する」(小野田社長)という。新規開設するレジャー宿泊予約サイトについても、今回のキャンペーンが適用されることから、「新規契約分については2006年1月まではシステム利用料は実質無料。お試しのつもりで、宿泊施設の方にはどんどん利用していただきたい」と宿泊施設の利用を呼びかけている。

楽天「値上げ」が波紋 ネット宿泊予約の手数料(asahi.com)

ホテルや旅館をインターネットで予約するサービスの利用が急速に伸びるなか、予約サイトで圧倒的なシェアを持つ楽天が予約手数料の値上げ方針を示したことで、業界に波紋が広がっている。ホテル・旅館の業界団体が激しく抵抗し、「値上げをしない」と宣言したライブドア系サイトとの業務提携を発表した。旅行業界におけるネット予約の存在感の大きさを示す騒動となっている。

●全旅連など猛反発

発端は5月12日、楽天が運営する予約サイト「楽天トラベル」が打ち出した契約条件の変更だった。

空室情報と価格を提供するホテル・旅館から楽天が受け取る手数料はこれまで一律6%。それを楽天は9月から、楽天向けに必ず部屋を確保して手数料を7~8%とするか、部屋は確保しない代わりに手数料を9%とするか、いずれかに切り替えるとした。

これに対し、2万2千館が加盟する全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)や全日本シティホテル連盟が猛反発。全旅連は28日、「手数料5%を維持する」と表明したライブドア傘下のベストリザーブと、予約サイト開発などで協力することを決めた。全旅連は会員に「ベストリザーブに多くの客室を安価に登録するように」と呼びかけている。

(後略)

しかしこのマーケットは

高・中級旅館・・・既存旅行代理店
中級旅館~民宿・ペンション・・・じゃらんnet

と、それぞれ地歩を固めた競合の牙城であり、簡単に突き崩せるものかどうかは予断を許さない。システム親和性やマーケット浸透度的には、まだしも一休が位置する高級シティホテルを狙う方が良いのではないかとも思えるのだが、ここは『格安出張予約』というブランディングが仇となり、コンシューマ・クライアント双方の確保の道のりが厳しいのだろう。

さて、ベストリザーブはもともとビジネス特化型という一点突破のニッチ戦略を突き進んできたのだが、プレスリリースを見るかぎり、さらなるニッチ型ビジネスへの移行を図っているかにみえる。昨年のプレスではあるが、

ベストリザーブ、宿泊予約サイト専門の検索エンジン「モノリス」を買収

宿泊予約サイトを運営するベストリザーブは27日、宿泊予約サイト専門の検索エンジンを運営する株式会社モノリスを買収することで基本合意したと発表した。10月中にモノリスの全株式をベストリザーブが譲り受ける。買収金額は非公開。

モノリスは、複数の宿泊予約サイトの料金比較が行なえる無料の検索エンジン「モノリス」を8月より提供している。現在、「じゃらんnet」「旅の窓口」「ベストリザーブ」「宿ぷらざ」の4サイトを対象に、エリアや宿泊日を指定して宿泊予約サービスの料金を比較できるようになっている。

(後略)

と、いわゆる価格比較サイトの買収により、同社はコマースサイトから、コンテンツアグリゲーターへの脱皮を図ろうとしているのではないだろうか。ここから先はネット業界に身を置く人間としての勝手な空想だけれども、クロールして収集した主要予約サイトのコンテンツを、さまざまな条件ごとにRSS配信したり、ブログやSNSのようなパーソナル・サービスにプッシュしたり、あるいは緯度経度情報の付与によるタウン情報提供や口コミマーケティング起点としたり、少なくともライブドア程度の知名度があれば、直接利益を捨てユニークユーザ数勝負に出ることは十分可能だろう。
その上で、現状の取り次ぎビジネス=代理店モデルではなく、ASPやCRM提供で宿泊施設を直接取り込んでいけば、かつて楽天本体が成功したような固定収入=インフラビジネスへと転化する希望がみえる。媒介業、なかんずくネット上のそれはスケールメリットのはたらきやすい業界であり、圧倒的に強い楽天トラベルに勝てる道が見えない以上、違う土俵に乗った方が話が早いということだ。

さて、一方シティホテル予約では圧倒的なコンテンツ量とブランド力を誇り、先頃IPOしたばかりでイケイケの一休.comだが、同社が急成長を続けるためには以下のいずれかが条件となる。

・同社のブランド力を活用できるような新規ビジネスに乗り出し、成功を収めること
・独壇場である、(高客単価な)シティホテルネット予約市場が今後も拡大すること

このうち前者はあまりにも不確定な話なので、既存ビジネスに絞って話を続けることにする。
これから一休が奪うべき市場を素人目に挙げてみると

1:団塊世代以上のネットシフト
2:カード会社、福利厚生サービスなどの会員制マーケット
3:ビジネス・エグゼクティブマーケット
4:海外顧客マーケット

という具合だろうか。2、3についてはすでに囲い込みがされている市場なので、それこそダイナースと提携するとか法人向けプライスを仲介するという方向性にいかないかぎり、簡単に成功の目はない。4は高コスト型のまさに旅行代理店ビジネスであり、可能性があるとすると1だろう。ただしこの数年で団塊世代はリタイアの道を歩んでいくため、この5年以内に彼らのネット習熟度が増加しないかぎり、マーケットが急成長するとは考えにくい。

個人的には、『マーケット絞り込み型戦略』で成功した企業が、継続的な拡大をするためのハードルは相当高いものになるのではないか、と、一休を見ていて思う。ニッチであるがゆえにブランド力が通用する範囲も限定的になるし、新規事業のせいで既存ブランドを傷つけるわけにはいかないため、他分野進出には慎重にならざるをえない(それで失敗した企業の代表例が、ユニクロやGAPなどのSPAだろう)。

ならば一休が成功を収めるためには、既存顧客のARPUを高めるという戦術もある。すでにブランド・ロイヤリティーの高い顧客に対し、クレジットカード会社なみのCRMで、レレバンシーの高いサービスを売り込んでいく。もちろん、差別的な会員制度(航空会社のマイレージのように)を用いて、上位顧客により魅力的な商品をセールスしてもいい。それはクライアントであるホテルのロイヤリティーを上げることにもつながるだろう。すごく教科書的な話になるけれど、一休は焦って急拡大を志向するよりも、現状の畑を深耕することに注力する方が、よりリスクが低いのではないだろうか。ブランド志向企業は、低リスク戦略でブランド維持を心がける方が、結果的にメリットが大きい、と個人的には思う。

次は、じゃらんnetについて。

■世評
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