冬と春、野焼きと土筆

先日帰省した際に、濃尾平野は輪中水郷の真ん中にある旧家にも立ち寄った。

暇をもてあまし、いささか時期外れの野焼きをする。
独りが30分もかけない準備なのでごく小さなものだけれど、それでも花が咲く季節だと、すぐにじっとりと汗ばむ火の具合。

野焼きの炎を見ながら、井上靖の「しろばんば」に描かれたどんど焼きを思い出す。僕はあれこそ日本の郷愁文学最高峰だと信じているが、ふるさとの焚き火は、いぶす煙から懐かしくて、そしてやわらかい。
そんなことをつらつら思い浮かべるのは、「しろばんば」に登場する主人公の生い立ちと我が身が少しオーバーラップするせいもあるのだけれども。

ようよう火も収まり、そろそろ引き上げるかと腰をあげたところ、目に入ったのは土手から顔を出した土筆。気の早いやつは、もうスギナに変わっていた。

冬にも春にも気付くことのない毎日だけに、野焼きの煙にいぶせ土筆の顔を見たことで、帰郷の喜びを実感。

 

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