島読書

島読書3泊4日のタオ島滞在も終わり、午後の船便でマレー半島に戻る。3泊と聞けば長いようにも思えるけれど、実際はぷらんぷらんと日を過ごすうちに終わる束の間のバカンスだ。

だんだんと円が弱くなっている気がして、それは円高ドル安になってもアジア通貨のドルリンクが弱くなっていることの証座。バーツレートなどを見るにつけ、いや別にユーロでもいいけれど、なぜ日本の経済ニュースは為替レートというと米ドル相場しか報じないのだろう、と海外にいくたびに思う。
そろそろ、 米ドルと日本円が抱き合って、世界的にそのポジションを落としていることをきちんと報じた方が良いのでないか。などと、数年前に比べてずいぶんひどくなったレートの両替レシートにサインをしながら思う。こういうナマな感覚は、バジェットトラベラーの身には余計につまされるのだ。

タオ島では、ずっと「どくろ杯:金子光晴」を読んでいた。金子が妻の森三千代と出会い、そして彼女の浮気から引き剥がすように上海、ジャワ、そしてパリへと二人で旅立つ道中紀行のお話。金を現地で工面しながら、日本での鬱屈を払うように旅の空を眺める詩人の筆致を追いかけながら、僕は夜も更けたヴェランダで、ぱちりぱちりと蚊を叩きどこからかなくトカゲの声を聞く。

「トッケイ、トッケイ」と鳴く声から「トッケイ」と名づけられた縞模様の20センチはあるトカゲが、7回「トッケイ」と続けるのを聞けば幸せになれる、と現地の人が云う。鳴き声が始まればいつも僕はその声を数えてみるけれど、5つを回ったためしがない。

別に日本で食い詰め逃亡したわけではないのだけれど、それでも浮世の道連れと二人旅の浜辺で読む金子の紀行文は、じわじわと胸に、清水のように染み入ってくる。男が旅に誘うときなど、碌な理由などいずれにせよあるわけがないのだ。

彼女がヴェランダに顔を出し、もっと安い宿に移ろうと言う。2500バーツもした初日の宿だけれど、奥通りで探せば800バーツのゲストハウスが見つかる。まあ、道行が森三千代でなくてよかったと思う。

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島読書 への1件のフィードバック

  1. Bouen のコメント:

    もっと高い宿をという贅沢さには困ったものだが、束の間の享楽になじめず「安宿を求める」所帯じみた感覚もいかがなものかと云えるのだが、でも享楽派に所帯派が同伴するからこそ人生は真っ当なものとなるのだろうと納得するのである。

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