亜細亜へめぐり紀行11

亜細亜へめぐり紀行111月11日

さて、過ごしやすい宿とも久々に会った日本人のM君とも別れ、いざ出発。スリランカ初めての、都市間ローカルバスにて移動だ。
次の目的地は、ここも世界遺産に指定されている、仏教遺跡ポロンナルワ。地図によると、アヌラーダプラからの距離は100kmほどなのだが、歩き方にはバスで3時間かかる、と書いてある。よほどゆっくり進むのか、それとも途中停車の回数が多いのか。

バスの車掌に聞いてみると、11時発だというので、まだ発車には30分弱ある。そのせいか、バスの車中には入れ替わり立ち替わり、あらゆる物売りが声を張り上げてやってくる。
果物や食べ物はよくある光景だけれど、「World heritage」とだけ表紙に英語が書かれた、あとはすべてシンハラ語のガイド本まで売りにくる。どう見ても地元民しか乗っていないこのバスで、誰が買うのだろうか。
バスにはどんどん乗客が乗り込んでくる。おとなしく確保した座席に座っていないと、余裕で横入りされそうなので、おとなしく車中にて待つ。風もなく、ひたすら蒸し暑い。
定刻5分前に、バスは合図もなく出発した。なかなか油断のならないバスである。出発したというのに、まだ物売りが飛び乗ってくる。今度は国政図会がついた、スリランカ全土の地図。不思議なものを売るものである。

このバスは順調に進んでいるけれど、途中で、故障して路上修理中のバスを追い越していくのが見える。今乗っているバスが、いつそうならないとは限らないのが、こういう国の乗り物のスリルではある。途上国にはメンテナンスという言葉がなくて、あるのは壊れてからのリペアだけだ。
行き交うバスやトラックは、インドのタタ製が多い。そういえばコロンボでは、タタが売り出した低価格車が、タクシーとして使われていた。
だいたいが輸入車、という状況を見ると、自国にほぼフルスペックの第二次産業が揃っている日本は、世界的にはトップレベルだということに、海外で初めて気がつく。

しばらく行ったところで、途中休憩。トイレにも行けるし、タバコも吸えるし、腰も伸ばせるのがありがたい。
一応、下車する前に、サブバッグで自席だけ確保しておく。本当の貴重品はもちろん入っていないけれど、雰囲気をみるに、インドのようにはどうやら神経質にならなくてよさそうで、ありがたい。
タバコに火を付けていると、何人だ、どこから来た、仕事はなんだ、と、スリランカ人の乗客が物珍しそうに話しかけてくる。人懐こい空気の国だ。
バスはやがて走り出し、小川を橋で渡る。川に小さいワニがすいすいと泳いでいるのが見えるではないか。水辺には近寄らないほうが無難だろう、と思う。

ポロンナルワは、遺跡がある以外はこぢんまりとした地方都市。
目をつけていたホテルに歩いていってみると、部屋代はガイドブックに記載された金額から、がっつりと値上げされている。ただしホテルはきれいで、ホットシャワーもある。どうしようかなとフロントで考えていたら、向こうから勝手に多少のディスカウントが提示されたので、手を打つことにした。一泊3,500円。
ボロ宿以外を探すと予想外に宿代がかさむ国なので、土日をむかえる前に早めの両替を済ませる。小さな支店だけれども、銀行員は流暢な英語を喋る。エリートなんだろう。

主だった遺跡は明日訪れる予定だけれど、公園地域から外れた南方にある遺跡群だけ、今日のうちに行ってみることにする。
湖のそばを走る道で、自転車のペダルを漕ぐ。風が心地よい。道沿いの木陰では、犬と猿が仲良く一緒の場所で遊んでいたりする、のどかな光景が見える。
水浴びをしている子供たちや、洗濯のついでに身体を洗う乙女の姿も見える。夕陽でオレンジ色に染まっており、大変フォトジェニックで、彼女たちを被写体にしたいと思うが、さすがにレンズを向けるのは遠慮してしまう。

でこぼこの砂利道を、硬いサドルの自転車で走るので、尻が痛い。おまけにスリランカには、東南アジアのようにマッサージ屋もないので、明日の遺跡見物は、日和ってスリウィーラーを使うことにでもしようか、と考えていたところ、道の向こうから、片道3kmの遺跡までの道のりを、歩いてきた初老の西洋人女性に挨拶される。明日もサイクリングにしよう、と思い直すことにする。

ここポロンナルワにも、食堂らしい建物があることにはあるが、外国人にとっては中に入るのが躊躇われる外観の店ばかりのため、夕食はホテルで食べることにする。
今日はポークしかない、と言われて頼んだポークカレー。シンハラ人は仏教徒なので、牛も豚もカレーに入れる。
アヌラーダプラのホテルで食べたカレーもおいしかったけれど、少し辛めの香りが立つカレーで、これも美味の部類に入る。さすが本場だけあって、スパイスの使い方が、日本のレストランとは根本的に違う。
難点はレストランが開放的すぎて、ひたすら蚊に刺されることだけ。たっぷりと刺された。

1月12日

今日で、この旅はちょうど40日目。

自転車で遺跡を廻る。ポロンナルワは遺跡保護区が通常の市街と線引きされているおかげで、保護区内は大変サイクリングしやすい。ペダルを漕ぐことに疲れたら、少し奥に入った誰もいないシヴァ寺院で、鳥の声を聴く。
およそ7kmの道のりと、あまたの遺跡仏像を経て、遺跡群の最北端に位置するフレスコ画で有名な寺院まで来た。今ここにいるのは、管理人と犬と僕だけだ。静かに風がそよいで、汗がひいていく。
遺跡の美しさもさておき、この静寂を独り占めすることができる環境は、今だけの特権かもしれない。

1月13日

セイロンティーの本場だけあって、圧倒的に紅茶がうまいことに気づいたので、ここしばらくは朝のコーヒーをやめ、紅茶に代えている。
ストレートティーもミルクティーも、抜群の香りと渋味がある。それほど高級な茶葉ではないと思うのだけれども、この味は日本で楽しめないしろものだ。

バスターミナルまでスリウィーラーで移動し、そこからバスで、またもや世界遺産に指定された石窟寺院がある、ダンブッラという町に向かう。ガイドブックによると、1時間半ほどの路程らしい。バスに乗り込んで、無事最前列の席と荷物の置き場を確保して、じっと蒸し暑いなか、出発を待つ。

バスターミナルまで乗ったスリウィーラーのドライバーに、バスに乗らずダンブッラまで俺をチャーターしないか、と誘わ
れた。言い値が5,000ルピー=3,500円と、かなり高価なので笑って断ったが、都市間移動までオート三輪が声をかけてくるあたりに、この国の観光産業の立ち遅れを実感する。
もう少し外国人でも使いやすい交通機関が充実し、ホテルが適正価格に落ち着かないと、スリランカ観光はブレイクしずらいだろうなあ、と思う。

先日見たとおり大型車はインドのタタ製が多いが、こと乗合バスについてはほとんど「Lanka Ashok Leyland」という、見慣れない銘板がついている。さっくりGoogleで調べてみたら、これはインド企業と合弁で設立された、スリランカの自動車メーカーなんだそうだ。いちおうこの国にも自動車産業があることや、インドが合弁の主導権を握るあたり、日本ではあまり想像しない産業地図があることに感心する。
ぜんぜん関係ないけれど、ここスリランカでも、ジーンズをはいている若者の腰ばき率が高い。日本は自動車産業のかわりに、ヘンな文化を輸出してしまったなあ、と思う。

ダンブッラの石窟寺院は別名黄金寺院とも呼ばれており、大きな大仏や、山の頂上付近に位置する洞窟内の壁画が有名である。

規模は小さいなりにいいものを見た、と満足して山を下ると、驚いたことに、アヌラーダプラの宿で仲良くなったM君とばったり再開。お互いのスケジュールを話してみると、彼は今日この足で、仏教都市キャンディへ向かうとのこと。それを聞くと、もう少し彼と楽しい時間を過ごしたくなって、僕も明日キャンディで合流することを約束。
旅先の偶然って、本当に愉快な気持ちになれるもんだ。

ここダンブッラからほど近くに、切り立った岩山に聳える遺跡、シギリヤロックがある。ここはスリランカ観光の白眉なので、声をかけてきたドライバーに、朝9時に迎えにきてもらうよう頼む。その足でキャンディに向かえば、M君との約束も果たすことができそうだ。

今日は海外の口コミ旅行サイト、Tripadvisorで見つけた安宿にチェックイン。WiFiとホットシャワーはついているけれど、2,500ルピー=1,750円の値段。タイなら中級ホテルに泊まれる料金だ。毎日同じことばかり思うけれど、やっぱりスリランカは宿が高いよな、とチェックインのたびに痛感する。
このゲストハウス、部屋は薄暗いしバスルームは小汚いし、Tripadvisorのレーティングほどでもないな、と、チェックインしてから何となく思っていたが、ロビーに出ると宿のオーナーがジュースをおごってくれる。
親切に感動する間もなく、コーラに口をつけるより早く、ちゃんと良い口コミ書いてよ、スマートフォンで書いてよ、と催促される。いやはや、インド洋の小島に来てもステマに遭うとは思ってもみなかった。

ここは本当に遺跡以外は大したものがない田舎町なので、退屈をもてあます。
ゲストハウスでアーユルヴェーダが受けられるというので、試してみる。1,400円なので、最初から本格的な施術は期待してもいなかったけれど、始まってみると、さすがにうんざりするほどひどい。アロマオイルを塗りたくり、マッサージの真似ごとをしているだけで1時間が過ぎていった。

宿泊施設にかぎらず、スリランカという国は観光客向けのサービスがどうしても割高になっている。しかしボッタクリの多いインドともまた異なり、悪気はないけれどお客が少なくて高くなる、という感じもする。
出会う人は善良なのに、土地にはあまり魅力を感じない、という、旅人としては稀有な感想を抱く場所かもしれない。

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