1997/10/04 5日目

 やはり、眠れなかった。暑さのせいだ。寝不足のはれぼったいまなこをこすりながら、早朝のバンコク駅に降り立つ。
 暑さにはほとほと嫌気がさしたので、今日は海辺のビーチに行こうと思う。目星をつけておいたのは、タイ湾北部、バンコクの南東にあるサメット島。バスターミナルからバスに乗るらしいのだが、駅の中に旅行代理店があるので、そこでチケットを買おうと思う。
 「400Baht」。高い。ボート代込みにしても高い。しかし寝不足の身で、バスターミナルまで行って交渉するのも面 倒くさかったので買うことにする。宿はあるか、とも訊いてみたのだが、わりと高級そうなところしか紹介してくれなかったので、それは現地に着いてから考えることにしよう。

 1時間後に車で迎えが来るというので、それまで駅の食堂でコーヒーを飲むことにする。えらく小さい食パンのトースト、油で揚げたような妙ちくりんな目玉 焼き、それとコーヒーのセットで55バーツ。タイではどこでもそうなのだが、ふらっと喫茶店に入って飲むコーヒーはたいがいインスタントで、おいしくない。ミルクもネスレの粉末である。贅沢は言えないのだが、もう少し高くてもよいからまともなコーヒーが飲みたい。

 駅に迎えの人が来る。たいそう感じのよい青年である。彼の運転する日本製のRVで、あちこちのホテルで客を拾ってからパタヤーに向かう。彼と話してわかったのだが、あの400バーツのチケットはバスのチケットではなく、この旅行代理店の乗り合いタクシーのチケットなのだそうだ。それならこの値段でも無理はない。パタヤーまでこの車で行き、そこから別 のタクシーに乗り換えるのだそうだ。
 高速道路にはいるが、いささか渋滞気味である。バンコクの渋滞はもはや名物とも呼べるくらいのもので、あれにイライラするようではバンコクの街歩きはおぼつかない。運転手の彼にいわせれば、今日は日曜日なのでまだマシなほう、平日はハイウェイもスロウウェイになるのさ、と笑う。日本も同じだ、と答え、変なところで意気投合する。
 2時間と少しでパタヤーに着く。ここから、サメット島への船が発着するバーン・ぺーという街までのタクシーを待つ時間を利用して、車中で知り合ったインド人のビジネスマンと一緒にパタヤーの海岸に出る。彼は化粧品の卸売りをしているらしく、タイの次はシンガポール、その後香港の展示会に出席するのだそうだ。今日は時間の合間を縫って、パタヤーに遊びに来たのだという。

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 彼とも別れ、バーン・ぺー行きの車に乗る。なんと乗客は私一人で、ほとんどチャーターしたも同然の状態である。タイのポップスを聴きながら、快調に車は飛ばしていた。のだが、途中からにわかに雲行きがおかしくなり、あまつさえスコールまで降り始める。港に着く頃には晴れたのだが、先行き不安である。
 船に乗ってサメット島へ。漁船と変わらないような船なので、揺れる。1時間弱で船は島の入り江に着いたのだが、遠浅の海岸のため、筏のようなものに乗り移り、浜まで行かねばならない。筏からは裸足になって上陸。なかなか面白いリゾートである。
 肝心の安宿を探さねばならないのだが、小さい女の子が近寄ってきて、「150Baht」と話しかけてくる。安い。部屋はバンガロー型の独立式になっていて、中は…値段相応である。一応トイレとシャワーはついていて、ここより安いところにもお目にかからなかったので宿泊することにする。布団は潮風でしけっていて、あまつさえ砂でざらついている。

 小雨が振ったり止んだりのいやな天気である。潮風と相まって肌寒い。せっかく避暑としゃれこんだのに、ここまで寒くてはリゾート台無しである。根が貧乏性なので、それでも海に入る。きれいな海である。透明度が高い。雨のせいで濁ってはいるものの、晴天時にはどんなにか美しい海だろう。

 夕刻に、浜辺のビーチハウスに食事をしに行く。メニューに「club」とあるので注文する。うまそうな茹でた渡りガニが2匹、目の前に出される。それと、焼き飯にビール。酔いのせいか、肌寒い浜風も心なしか気持ちよく感じる。

 ちなみに、ここでは夜6時からしか電気が使えない。そんな、素朴な田舎であった。蚊取り線香を焚いて、眠ることにする。

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