おうちの近所にシネコンがあるので、まずはハシゴの第1弾。
映画をアートやエンターテイメントとして定義する向きの中には批判もある一作だが、マイケル・ムーアの暑っ苦しいくらいな政治的主張に肯首できる人なら、面白く見られるのではないか。映像というトリッキーなメディアで政治プロパガンダをしてしまうことの危険性を踏まえた上で、それでも彼はこの作品を世に送り出したかったんだろう。それだけで十分。そして、彼の願い通り、フィルムの力によって僕たちは胸の痛みを実感する。ロックを聴きながら戦車でバクダッドに突撃するなんてシーン、冗談以外のなにものでもないはずの『事実』が存在してしまうことに、僕はただぼうっとスクリーンを見ていた。
こういう作品が世界を動かすというのも、たまには悪くはないんじゃないかと思う。あんまり頻繁にあると、また順応性が高い僕らの脳味噌のこと、そのうち目の前でリアルが繰り広げられないかぎり、実感を持てないようになってしまいかねないしね。だいたい、こんな訴えをしょっちゅうしなけりゃ平和に生きていけない世界なんて、はなから願い下げだ。