西ひがし-金子 光晴

西ひがし
★★★★☆
金子 光晴 (著) 中公文庫


愛する妻をパリに置いてマレー半島に行き、彼女の帰国旅費を絵描きとして稼ぎながらの心理描写、旅情風景を描いた作品。大方に知られるとおり、これは金子光晴とその妻森三千代の旅した一連の連作紀行の1冊。常に頼りになる男に寄り添う妻を、芸術家らしい恋情と諦めで遠くから想いながら、そしてままならぬ己の境遇と旅の浮き草を重ねた筆致は、旅先に持ちゆく本としては最高の1冊だ。

実際これを読んだのは数ヶ月前のタイで、僕は玄関灯に照らされるヤモリと共に読んだ。そして上質のモルトウィスキーを舌先で転がすように、その散文体を味わった。詩人だけあって、彼独特の比喩はたとえがたく、胸に染み入ってくる。

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