モバイルの向こう側::モバゲータウン分析を経て

以前から、株式会社ディー・エヌ・エーが運営しているモバイルコミュニティサイト「モバゲータウン」がアツい、という話は聞いていて、実際にちょっといじってみたのだけれども、何だか感性をくすぐられるものがなかったのでそのままになっていた。で、ちょっと仕事がらみでリサーチをしてみることになったので、あらためて再登録。

モバゲータウン、というのは、
アバターとか日記とかプロフィールとかの自分の属性を「部屋」に登録でき、それを友達同士で公開しあうコミュニティ。趣味のサークルとか質問広場(Yahoo!知恵袋みたいなもんだ)があり、SNSといえないこともない。
・モバイルゴールド(通称モバG)と呼ばれるサイト内仮想通貨があり、懸賞やら着メロやらの広告スポンサーサイトに会員登録することで獲得できる。現状ではアバターとの交換にしか使えないみたい。
・自分の部屋を、実際の日本地図上に「家」としてマッピングすることができる。これでご近所さんとの交流を図ったり、ご近所サークルを作ったりすることができる。
・メインターゲットは高校生。
・モバイルサイトのみ。PCサイトは存在しない。
こんなサイト。

低年齢層中心ということもあり、個人的にはコミュニティの何が面白いのか分からなかった。十代の少年少女が「ぅちもオナチューだぁぁぁぁ♥☆☆☆☆☆☆ょろしくぅぅぅwww」みたいな頭が割れそうで結論がない書き込みばかりを繰り返していて、僕が彼らの年ごろに流行った交換日記や部活の雑記帳より意味性のないコミュニケーションばかり。

とはいえ、このサイトが2006年9月現在で33億PVと170万人の会員を抱えるまでに成長しているのだ。しかもサイトオープンが今年の2月だから、たかだか半年ちょっとの期間で。モバイルコミュニティはPVが伸びやすい、とかそういう問題ではない。お化けだ。

で、おしごととしてのサイト分析は
・MT/FT層をケータイサイトで囲い込むマーケットづくり
・EC連動やサイト内仮想通貨の発展
・オプトイン広告、モバイル広告、マーケティング利用の促進
・地域クラシファイドモデルの構築
・地縁SNS化
などという当たり障りのない結論を出してとりあえず終了、だったけど、僕個人の中にはものすごい割り切れなさが残った。その理由は、ロジックにすると以下の列挙のとおり。

・ケータイサイトを出先における(PC版の)サブセットとして作るやり方は古い。少なくとも、サブセットサービスとケータイメインのサービスは分けて考えなければいけない。
・ケータイサイトは、おそらくPCサイトとは異なる層をマーケットにして伸長していく。その層は「低リテラシー」であり、良くも悪くもPCを端末として利用する層よりも「コンシューマー」と呼ぶにふさわしい。
・つまり、ケータイというクローズドな環境でPushコンテンツを受容しやすいユーザであり、PC以上に消費ターゲットとして適切。
・既存のサブセットサイトはあくまでもサブセットであり、ケータイメインのユーザを取り込めない可能性がある。つまり、「ケータイだけでは儲からない」という俗説は、PCサイトで消費の大半を行うユーザを相手にしているからであり、ケータイというメディアやスキームに問題があるからではない。
・そんなこんなのトレンドの中、PCサイト屋とケータイサイト屋の間には、本質的に指向性やノウハウそのものに差異が生じはじめている。
・で、PCサイト屋さんで三十歳になった僕には、若年層向けケータイサイトを構築できるマーケティングデータや感性が圧倒的に欠けている。

いろんな意味で脅威だ。だけれども、どうするべきなのか。
どうするべきなのか、を導き出すのはリサーチでも仮説でもなく、それに加えて自分の直感的な「分かった!感」だ。

それが来ないのだ。

巷間かまびすしい「ケータイとPCのキャズム」を、初めてリアルに実感できたのは良かったけれど、そのキャズムの「向こう側」が感覚的にすとんと落ちてこないのもまた、僕にとって初めての体験であり、ようやくオールドレガシーとラベリングされる側の気持ちが分かった。それがこんなに辛いものだとは、と。

はちまきを締め直していきたいところ。

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2 Responses to モバイルの向こう側::モバゲータウン分析を経て

  1. HinaのREA のコメント:

    マスメディアとパーソナルツールの間に「キャズム」(06.07.13)を指摘したTAWAGOTO氏も「ケータイとPCのキャズム」という陥穽に出くわしたということですか!!!  Googleで「オールドレガシー」を検索したらTOPに「オーマイニュース雑感」がヒットしました。!!!

  2. ピンバック: Beauty

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