1997/09/29-30 前夜および1日目

 バンコク行きのチケットは、11日間FIXで45,000円を切った値段で買うことができた。しかもタイ国際航空の直行便。安いものには当然ウラがあり、このチケットで搭乗できるのは、関西空港を早朝5時に出発する便なのである。当然前夜からの泊まり込みになるわけだが、それでも安さには換えられない。朝まで独りぽつねんと過ごすのも侘びしいので、「ピンキー」に見送りについてきてもらう。朝の5時に、家まで独りで帰らねばならぬ 彼女の方こそ気の毒ではあるが、本人の好意なのでありがたく頂戴する。ところがいよいよチェックインという時間になって、やはり彼女はヒステリーを起こしてしまう。いつものことなのでやんわりとなだめながら、ゲートへといささか後ろ髪ひかれる思いで歩きはじめる。

 バンコクには10時前(現地時間)に到着。まだ、朝なのである。とても数時間前に日本を出立したという感慨が湧かない。2度目のタイ旅行ということもあるのだろう。ただ、じりじりと照りつける陽射しだけが南国である。
 空港の目の前に国鉄の駅があり、空港からは跨線橋一本でたどり着ける。あらかじめ調べておいたピッサヌローク行きのディーゼル特急のチケットを筆談で購入する。342バーツ。日本でいえば、「のぞみ号」のグリーン車のようなチケットだ。ちなみに、タイ国鉄の職員はエリートなのだそうで、外国人が訪れるような駅ならばたいてい英語が通 じる。おまけに主要駅には日本の「みどりの窓口」のようなコンピューター・システムの発券装置があるので、切符の予約も90日前まで可能。大変便利である。
 さて発車までまだ1時間以上もあるので、駅前の小ぎれいなホテルでコーン・フレークとコーヒーを食べる。これが170バーツ。3等車ならばマレーシア国境まで行ける値段なので、庶民にとっては縁遠い存在に違いない。日本から来た若者は暑さに負け、エアコンのきいたレストランでのんびりとコーヒーを飲むのであった。

 いささか埃に汚れたディーゼルカーが駅に着く。切符を見ながら、指定された席に向かう。全車エアコンなので、大層快適である。ただ、窓から物を買うような、旅情あふれる真似はできない。
 そのせいなのだろう、昼には弁当が配られる。この弁当も切符代に含まれているようだ。もともとこの高速ディーゼル列車は飛行機に対抗するために登場したらしく、お弁当を配るのも見目麗しいタイ美人のスチュワーデス(?)である。駅弁は濃い味付けの白身魚と鶏肉で、不思議な味がする。
 じゅうぶん快適な列車ではあるが、空調の効きが少し弱いため、陽のあたる窓際の私の席は暑い。おまけにビニール皮のシートは、3時間も乗ればやはり尻が痛くなる。特急列車なので途中駅にも長時間停車をすることなく、座りっぱなしを余儀なくされる。
 内陸部に進むにしたがって、田圃の水が少なくなっていく。高床式の家も見えなくなってきた。
 また、ちょっとした都市の郊外には、必ず建て売り住宅が見える。まさに、日本の高度経済成長期のような風景である。「文化の破壊される瞬間」に、立ち会っている気持ちになった。

夕刻にはピッサヌロークに着いた。とりあえず宿を決めようと思う。群がってくるサムロー(註:客席の着いた三輪自転車)牽きを振り払い、駅そばの「ASIA Hotel」に向かう。ファン・シャワー・トイレ付きで200バーツ。180バーツに値切る。
 荷物を置き、サムローをつかまえてワット(註:タイ語で寺の意)・ヤイに行く。10数分で20バーツだったので、これくらいが市内移動の相場だろう。
 ワット・ヤイにはタイで最も美しいといわれる仏像が安置されている。

thailand_1997

 上がその写真であるが、確かにまばゆい仏様ではあった。
 さて日も暮れかかってきたので、マーケットにでも行って夕食を食べようと思った。ふらふらと歩いていくと、川に筏を浮かべ、その上で暮らしている人たちを見つけた。

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 電柱から筏に向かって電線がのびている。テレビの音が聞こえるのが意外だった。

 ナイトマーケットは川沿いにある。心地よい風に吹かれながら、屋台でビーフンを食べる。10バーツ。隣りに「燕萵」と漢字で書かれた屋台があったので、燕の巣であろうと推測して注文する。甘く熱いシロップに、クズの燕の巣が入ったデザートだった。
 象に乗った男がバナナを売りに来る。「空飛ぶ野菜炒め」と日本語で書かれた看板の屋台まである。宙に野菜炒めを放り投げるのだろう。田舎町でも、観光客相手の商売は盛んである。

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