暮れなずむ海辺のレストランで、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を読了。
異国の浜辺で太陽に炙られながら読む本は、カミュの『異邦人』が僕のベストなのだけれども、夕暮れに限定すると『グレート・ギャツビー』だってなかなかのものだ。
ちなみにもう一冊帰路に読もうと持ってきた本があって、金子光晴の『マレー蘭印紀行』がそれだ。スノッブなチョイスは今に始まったことではないけれど、少しくらい高尚な書物の方が、見知らぬ土地には良く似合う。まあ、タイが未踏の地であるかどうかも微妙なところではあるのだが。
陽が落ちて灯がともる刻限に、大きなスクリーンに目がとまってバーに入る。折角の大画面なのに、随分とひどいパンク・バンドのPVが延々と流れ続けているだけ。居酒屋よりも不味いジン・トニックを傾けながら、それでも飲み干すまで居座ってみる。それで、昼過ぎの台詞を思い出す。・・・
妙な味のするチーズをのせたピッツァを頬張りながら、連れ合いの愚弟が、常にハイテンションな僕を眺めながら、「よっぽど毎日不満が多いのか、それとも日本には追いかけるものが無いのか・・・」と、堪えかねるように呟いた。
・・・虚を衝く問いかけともいえぬ彼の言葉に、いささかうろたえながらもどうしてだろうと口篭もりながら、僕もその理由を考えてみた。理由が判れば苦労もしなくて済みそうなものだけれど、理由を探しながら生きてみるというのも、これはこれでしんどいものなのだ。さぞかし気楽に見えるんだろうけれど。
こうしてぼくたちは、絶えず過去へ過去へと運び去られながらも、流れに逆らう舟のように、力の限り漕ぎ進んでゆく。
スコット・フィッツジェラルド:『グレート・ギャツビー』より
とどのつまりが、愚弟が付き合いきれずに寝入ってしまって、倦怠な南国の夜なんである。一日に2回もネット・カフェに入り浸ってるんだから。
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