カーヴァーズ・ダズン―レイモンド・カーヴァー傑作選
レイモンド・カーヴァー (著), 村上 春樹 (訳)
中央公論新社
★★★★☆
神戸のジュンク堂で買った、「レイモンド・カーヴァー:カーヴァーズ・ダズン―レイモンド・カーヴァー傑作選」を読んでいる。フィッツジェラルドを再読し、ヘミングウェイをきっちり読んで以来、アメリカ小説にはまっている。昔は味も素っ気もないヤンキーのお国のご本てな認識しかなかったのだけれども、都会の生活を続けているうちに、僕のメンタリティーが、彼らの珠玉に寄り添ってきたみたいだ。乾いた文体で語られる、ヨーロッパのそれとは一風異なるアイロニーに、僕は深くシンクロする。まだ彼らをアメリカ小説、でひとくくりにしている時点で、この先にはおそらく宝物が眠っているはず、という予感が僕をとらえている。
レイモンド・カーヴァーは、短編という総体の分量だけでなく、文章じたいも削ぎ落とされてぎゅっと絞ったレモンの、まだ瑞々しいようであるのがいい。決して絞り滓ではないその残り香。読みながら、僕は一行に出会って、そしてまた溜め息をつける。村上春樹訳ということも相まって、僕を彼の世界にいざなう。
最近、そういう意味では読む小説々々、あたりまくり。こんな幸せなことはなくて、後はこいつらを片手に旅へと出られたら、もう何だっていいや。
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