スピルバーグ&トム・ハンクスという王道なので外すことはあるまいと思って見に行ったが、きっちりと平均点以上の作品。まあそれ以上ではないのだけれども。
なぜ主人公がニューヨークに来なければならなかったのか、という理由が『亡き父親が集めていたジャズマンのサインが一人だけ足りず、コンプリートして墓前に供えてあげたい』というあたり、あまりのドラマツルギーの無さに愕然としたのだけれども、好意的に見ればここでお涙頂戴の「生き別れの妹が・・・」なんてエピソードにすると本当に三文芝居になってしまうのであり、主人公の母国であるクラコウジア(架空)はおそらく東欧と推測されるので、主人公の父親在りし日=プラハ動乱などの暗黒の東欧時代、となり、ジャズ=アメリカの自由闊達文化のシンボルを欲するという設定を導くことができるので、現代では主人公が内戦の余波に巻き込まれ、過去のお話として鉄のカーテンの向こうからジャズの香りに憧れ続ける、という(いささかアメリカ史観的ではあるが)平和への想いを描き、かつそれぞれ「テレビの向こう」「父親の追憶」という間接性を持たせることにより、現代社会の「戦争の捉え方」を織り込んだ一作ともいえよう。
・・・なんて考察をすることだってできるのだけれど、そこまで僕が思うのも、やっぱりスピルバーグが好きだからなんだろう。
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