宿泊予約サイト分析-1 ヤフーの誤算

これだけ一度にニュースがあると面白い。ネット宿泊予約業界夏の陣。

ヤフートラベルとじゃらんの提携
http://www.asahi.com/business/update/0802/114.html

一休ついに上場
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0507/01/news108.html

楽天トラベル値上げの波紋
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/07/27/8567.html

ライブドア=ベストリザーブの巻き返し
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0507/25/news060.html

この5社の予約数(室数ベース)は、推計で以下のとおり。

サイト名 年間予約数 楽トラ比較
楽天トラベル 11,000,000
じゃらんnet 2,564,000 17.1%
ヤフートラベル 1,650,000 11.0%
一休.com 750,000 5.0%
ベストリザーブ 600,000 4.0%

※楽天トラベルの年間予約数
asahi.comより。楽天トラベルのリリース資料と、フジサンケイブログの数値より、これは「予約室数」と思われる(年間成長率20%で、最新200万人泊だと1100万人泊では小さすぎる)。
※じゃらんnetの年間予約数
じゃらんの公開データにある予約人泊数より類推すると、asahi.com記事中の641万泊は「人泊」のことと思われるので、1部屋あたり2.5人と仮定して算出。
※ヤフートラベルの年間予約数
asahi.comより。業界ポジション的に独断と偏見で予約室数と推定。
※ベストリザーブの年間予約数
ライブドアIR資料に記載の同社売上高(=2.1億円)、公開されている手数料率(=5%)、直近の月間予約数(=7万泊)より推定。
※一休.comの年間予約数
同社IR資料の宿泊事業売上高(=11.6億円)、平均室単価(=22,000円)を元に、手数料率を7%と仮定して算出。

要するに圧倒的な市場支配力を持つ楽天トラベルに対し、ヤフー+リクルートという2・3位連合が成立してもそのシェアは3割にしかならない。一休とベストリザーブはそれぞれ5%前後。包囲網すら成り立たないという現実の前に、結局騒ぎになったものの、楽天トラベルの手数料率値上げは成功する可能性が大きい。6%を7~9%に上げるだけでざっくり平均30%の売上増が見込める。来年の決算にもある程度のインパクトを与えられるだろう。

楽天トラベルには、それだけの市場支配力があるということを前提にして、今後の考察を進めていきたい。ただし注意して欲しいのは、売上高・取扱高ではなくあくまでも「販売室数」=「契約成立トランザクション数」ということだ(この点については別項で論考)。

まずはネット業界の王者ヤフー。最初に同社の誤算を明らかにしておく。
同社はJTBと組み以下の商品ラインアップを揃えた。業界No.1どうし連合という、非常に単純明快な発送だ。

シティホテル・旅館 → JTBの通常店頭販売商品を、JTBプライスで販売(例:セレクト3000
ビジネスホテル → JTBとの合弁会社たびゲーターによるネット商品の独自仕入れ

一休は「高級ホテルが安い」という独自路線で成功したのだが、ヤフーは本来利益率=トランザクションあたりの売上、が高いシティホテル商品の仕入れをJTBに依拠する結果、その価格競争力がきわめて弱いという事態に陥った。価格比較をしてみれば一目瞭然なのだが、そもそも店頭販売コストを勘案して値付けされたJTB商品は、ネット上での競争力が皆無に等しい。
ボリュームゾーンであるビジネスホテル予約は、ホテル数で旧旅の窓口→楽天トラベルに負け、価格破壊戦略をとるベストリザーブに及ばない。
結論からいえば、インターネットによって旅行代理店業界自体が根本からプライシング・パラダイムが変革しているにもかかわらず、既存の王者JTBと組んだがゆえ、ネット専業代理店が主導する変革の波に乗れず苦しんでいるのが、今のヤフートラベルだといえよう。

問題は提携したじゃらんの商品で、果たしてこの状況をリカバーできるかどうかだ。
じゃらんの強みは旅館・民宿であり、好意的に評価をすればもうマーケットが伸びきっている都市部ホテル予約ではなく、今後の成長が見込まれるリゾート需要対応に舵をきったと言える。リゾート・セグメントの強みは客単価の高さであり、ネット宿泊予約という事業はトランザクションあたりの単価が業績に直結するジャンルなので、その方向性は間違いではない。ただしボリュームゾーン=都市部予約での弱さをカバーできないままの状況が続けば、当面の苦戦は免れない。顧客リテンションやARPUを上げていく方策は、やはり併せて必要だろう。

次は、他サイトの分析をしてみることにする。

【参考】
▼論考・分析
@ネットおたく
AWAZON
ひでたんブログ!

▼ホテル側の意見
ホテル28広島
ホテルの布団部屋~ビジネスホテルビーエル~
宿屋のオヤジのひとり言

▼世間の評判
新聞記事・ニュース批評@ブログ
ゆみしん徒然の書
でも、私には「今」がある

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