資産の嗜好

昔から変人呼ばわりされているので、さすがに三十路にもなればそれにもずいぶん慣れたものだけれども、三十になると趣味だの嗜好だのだけでなく、人生の態度あたりで議論することも増えてきたなあ、と思う。具体的には資産だの財テクだのってやつだ。

昔から僕は「家を買わない」「勤務先の株を買わない」というのをポリシーにしているのだけれども、世間的な常識に照らし合わせると、ずいぶん奇天烈なものらしい。ほんとかよ。

持ち家は資産、いざというときに安心、家賃は払っただけだがローン返済は自分の資産形成、というのがまず言われてしまう反論だけれども、仮に3500万円の物件を35年ローン固定金利3%で購入したら、支払総額は5500万円くらい。買えるのは郊外の3LDKといったところかな。

これで月々10万円に加えてボーナス月は30万円の出費だ。マンション買っても共益費だ修繕積立だと余計な金はかかる。賃貸なら同じ金でもう少し都心に住めそうな気もするし、住宅公社の物件なら半額近くで借りられる。子供の進学先や勤務先の都合によって引っ越しできるメリットもある。

おまけに企業のB/Sでいえば流動比率ががっくりと下がり、代わりに長期借入金が固定負債として貸方にのしかかる。つまり企業ならリスクに耐えられない硬直体質となるわけで、実際に失業でもしたらアウト。もともと3500万円の価値しかないものに5500万円もつぎこんでいるわけだから、すぐに家計は破綻です。これが賃貸なら、引っ越しでダウンサイジングできるのに。いざというときに安心なのは賃貸の方じゃないかって気がする。
そして35年ローンを払い終わるころには、とっくに減価償却も終わって資産価値はゼロに近くなる。切ない。
人口減少と都心部の高度利用が進むこれからの日本で、住宅供給が逼迫することは考えにくい。老後のすみかって問題も、団塊の世代、団塊ジュニアがそれぞれ歳をとっていくなかで、遅かれ早かれ社会的な合意ができるだろう。

もう一つの勤務先の株を買わない、というのはもっと単純で、たとえ会社から上乗せ支給が出ても、フローとしての給与とストックとしての株がぜんぶ出所同じ、って、リスク分散の観点から見れば最悪だ。会社が潰れたら給料も貰えず資産は紙くずになる。そこまで極端じゃなくても、例えば輸出産業に勤務していて内需株でも買っておけば、為替相場へのヘッジになる。庶民が株をやるのって、安定した資産形成のためだと思うのだけれども、勤務先の株は安定とは遠いのだ。どんな優良企業であっても。

とまあそんなことをあらためて考えてみるにつけ、そりゃ話が噛み合わなくなるよな、と思う。マンション買う人もいっぱいいるし自社株投資をやる人も多いので、下手すりゃ明日からランチに誘ってももらえなくなりそうだ。そういうリスクがあっちこっちにあるのが変人の辛いところだけれども、それでも泰然としているあたりは、まあマンション買う人とおんなじだな。どっちもどっち。

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