アフターダーク

アフターダーク ★★★★☆
村上 春樹(著) 講談社


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村上春樹の最新作にして、実験作。
不安にまみれた社会世相に対するメッセージがモチーフである、という明らかさにもかかわらず、それを実験的技法と、ハルキストにはお馴染みの二面構造世界をさらに多面化した舞台設定で、巧みな文学作品へと仕上げている。
・・・というのはやっぱり村上春樹信奉者の言い分で、ふつうの人が読めば辛いのかもしれない。物語に結末はなく、全ての希望も絶望も夜が明けた後にさえ繰り返し、言葉は夜に吸い込まれていくだけ。救いが、あるようでない世界。それを実験作というか独り善がりというかは、著者への思い入れによって変わってくるのだろう。

僕はそれでも好きだ。かすかな予兆をたぐって生きていくことを、静かに描いた小説だと思う。
そして、僕は村上春樹の新たな胎動を、ほんの少し感じて、やっぱり嬉しく思うのだ。

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