亜細亜へめぐり紀行09

1月3日

クアラルンプールに向け、まずはタクシーでバスターミナルへ移動。つかまえたのは、かなり年季の入った日本車。ひょっとすると80年代産なんじゃないかと思うデザインだ。
街を歩いていてすぐ気付くのだけれども、マレーシアは所得水準のわりに、意外と車がボロい。車歴20年はザラだ。たぶん国産車であるプロトン保護のための、輸入車高関税政策のせいだろうと思う。ブミプトラ政策で民族資本の発展を図ってきたこの国だけに、TPPで一番影響を受けるのは、日本じゃなくて、マレーシアの自動車産業なのかもしれない。

いっぽう相変わらずバスはきれいでシートもゆったりしており、本を読むうちに、クアラルンプール郊外のバスターミナルに到着。
ここは鉄道駅直結のため、都心への移動はラク。クアラルンプールは鉄道網が完備されている、数少ない東南アジアの都市だ。

安宿といえばチャイナタウン、という、古いアジアの流儀が残っている街で、やっぱりチャイナタウンに宿をとった後、クアラルンプール有数のコンプレックスであるKLCCに出向く。ここでユニクロの服と、紀伊国屋の文庫本を購入。まったりクアラルンプールで過ごす準備完了だ。
ちなみに、ユニクロでTシャツとパンツを何枚か買った勘定は200リンギット。洗濯屋のオヤジから弁償してもらった金額に足すこと1,000円ほどで、着古しの旅支度が新調できた計算になる。Tシャツ20$するんだぞとか言ってすまんかった、オヤジ。

同じKLCCの1階にあるスターバックスでカフェラテを頼み、さっそくまったりする。
ここはスタバには珍しく、屋外席なら喫煙可。頭上に聳えるのは高さ452mのペトロナスタワー、眼前に広がるのは広々とした噴水公園、という、お茶するには最高のロケーション。
スターバックスのすごいところは、世界中どこでもほぼ同じようなカフェラテが、同じような値段で飲めることだと思う。しかし、マレーシアのスタバはミルクが不味い。国民所得とスタバの味が比例しないのは、意外な感もある。

現地時間の7時を過ぎたが、まだ外は明るい。バンコクより夜が短いな。緯度の差を感じる夕暮れ。ペトロナスタワーにネオンがきらめくようになった時分で、チャイナタウンに戻ることにする。

界隈を歩いて、ニセモノ、スケベDVD、シャチョーと、20世紀的な声をかけられながら、屋台で遅めの夕飯。排骨炒飯と空心菜。

チャイナタウンのいいところは、メシと買い物に困らないところだと思う。逆に困るのは、食後にぷらりと入れるカフェが見あたらないこと。
仕方なしに、マクドナルドへ。マレーシアのマクドナルドにはフリーのWiFiがあり、簡単な設定ですぐにネット接続が可能。もちろん無料。

ホットコーヒーを飲みながら、日本とあまり変わらない店内の内装に、スカーフを巻いたイスラミックな女性の姿を見つけ、不思議な気分になる。かえってこういうグローバルチェーンのお店の方が、なぜだか異国に居る感覚を増してくれるような気がする。

部屋にはタオルとブランケットがなかったので、宿屋のオヤジに訊ねてみると、掛布は出てきたがタオルはない、とのこと。
いちおうタオルくらい持ってはいるけれど、シャワーは水、鉄パイプのベッド、薄暗い室内、という、あまりにも安宿然としすぎた光景にはうんざりするので、明日には宿を変えようと思う。1,300円と安いことは安く、物価が高いクアラルンプールだけに致し方もないんだが、もうちょっといい宿に泊まりたい。

外に出て、ぷらぷらと通りを歩き、よさそうなホテルを二つほど見つける。その場で検索すれば、すぐ値段が分かる。
いい時代になったもんだと思うが、これがバックパッカーか、といわれれば、あまり自信はない。

1月4日

小汚いゲストハウスをチェックアウト、そばの小綺麗なプチホテルに移る。
1泊にして800円ほど高くなるが、快適さには替えがたい。チェックインまで少し待ってね、とのことなので、スタバで時間つぶし。こうやって午前は過ぎていく。

部屋に通されてみると、今回の旅行で初めてこんな綺麗なホテルは初めて。液晶テレビが壁掛けでついている。熱いお湯がたっぷりのシャワーも快適。贅沢は頼もしい味方なんである。
そういえばホーチミンでも、中級ホテルに移ったことがあった。多分に感覚的なものだけど、ある閾値を下回ると安宿拒絶反応が起こるのかもしれない。

午後からは市内観光ということで、マレーシア最大の国立モスクに来てみる。
入口の掲示には、礼拝中を含む時間は入場できません、とのことで、外観を眺めるだけになる。
他宗教の寺院はあまりこういう制限がないので、どうしても日本人の感覚だと、イスラム教はこういうところが不寛容だと感じるのはやむを得ない。

モスクがあるクアラルンプール西部は丘陵地帯になっていて、その丘々にいくつかの観光施設がある。まずは、確か15年前にも訪れたバードパークに足を運ぶ。
男独りで遊びに行く場所ではない気もするけれど、入ってしまえば案外に楽しい散歩コース。目の前をクジャクが歩いていく鳥園、というのも、なかなかない。

鳥の次は蝶を、とバタフライパークもついでに入園。
たぶん先ほどのモスクからだろうけれど、ここまでコーランの声がスピーカーから流れてくる。イスラムだなあと思う。

駅に戻り、モノレールに乗る。15年ぶりのクアラルンプール。随分と垢ぬけた街になった。モノレールも地下鉄も当時はなかったし、昔の面影はあまりない。スタバの看板のせいかもしれない。
モノレールはちょうど夕方で混雑しており、みんなわれさきにと車両へ乗り込んでいく。途上国に来るたびに、行列ができないうちが途上国なのかもしれないなあと思う。

夕食は豚肉の漢方煮込み、肉骨茶(バクテー)を食べる。代表的なマレー料理だけれど、確かにこれは美味い。良く煮込まれた柔らかい豚肉と、漢方の滋味が出ているスープ。全部飲み干すと汗がどっと出てきて、体に良さそうな感じはする。

きれいに晴れた夜なので、KLタワーに。ここからの夜景も、香港や台北に負けず劣らずのネオンで、目の前にはペトロナスタワーが見えるのが、クアラルンプールらしくていい。
坂の上まで、行きはえっちら歩いてきたけれど、帰りはフリーシャトルが目についたので、それに乗る。最寄りの駅くらいまでは行くのかと思ったら、本当にシャトルで、何もない麓で降ろされた。

今日はよく歩き、漢方料理も食べ、ついでにフットマッサージを受け屋台の羅漢果ジュースを飲む。かなり健康的な旅の一日ではないか、と自画自賛。

1月5日

クアラルンプールの郊外には、マレーシア一の奇祭、タイプーサムが行われることで有名なヒンドゥー教の聖地、バトゥ・ケイヴがある。
中央駅から電車1本で行けるので、午後から郊外トリップ。
長い階段を上り、大きな洞窟に入ると、中にはヒンドゥー寺院がある。ここでは祈りの音楽が捧げられていて、その奥にはご神体に上から陽が差し込んでいる。
ここはパワースポットだな、という空気が確かにある。洞窟の中はひんやりして気持ちよく、時があっという間に過ぎていく。


チャイナタウンの外れにある、オシャレなニョニャ料理のカフェにて、夕食。注文するのは相変わらず空心菜。アジアの野菜といえば、これなんじゃないかと思う。国によって、同じ炒めものでも微妙に調味料が違うのが面白い。
それにカレーヌードルを注文。ココナツミルクが効いた甘い味。

カフェを出て、歩行者天国になった目抜き通りにある、恭和堂なる老舗で、真っ黒な色をした漢方ゼリーを味わう。
香港の亀ゼリーと似た食感で、苦いけれど、シロップをかけて食べると悪くない。汗が出て身体にいいんだよ、とは、店のおばちゃんお墨付きの効能らしい。

1月6日

中華街は何を食べても美味しい。この日のブランチは鶏肉粥。スープで煮込んだ中華粥は、日本のお粥より口に合う。

クアラルンプールにも水族館がある。日本の水族館を見慣れた目には、たいしたことがないように映る規模だ。今日は夜にエアポートホテルへ移動するので、しばらくクアラルンプールの下町をぷらぷらすることに。

ここは華僑に負けず劣らず印僑の人口も多く、サリーやスパイスが並ぶインド人街も規模が大きい。もちろん、ヒンドゥー寺院なんかもある。

セントラルターミナルから、空港行き特急に乗車。
クアラルンプールの空港は、通常のターミナルとLCC向けのそれが直結しておらず、バスで30分ほどの回り道をしないと辿りつかないので、向こうに着いたらシャトルバスに乗り換える必要がある。どうもこのあたりは、徹底したLCCイジメなんじゃないかな、と思わざるを得ない。

1,000円近くするだけあって、エアポートエクスプレスは快適で、かつ空いている。バスの方が、実は圧倒的に安く、列車の1/4ほどの値段だった。
とはいえ、想像以上に速いエアポートエクスプレスの速度。GPSロガーは時速150kmを指している。体感速度は、確かにスカイライナーなみだ。

明日のフライトが早朝6時なので、空港そばの宿をあらかじめ予約しておいた。一つ星の値段で五つ星のベッドに、がキャッチコピーになっている、LCCエアアジアが経営するホテルにチェックイン。

正直なところ値段は一つ星ほど安くないし、部屋はせいぜい二つ星、値段相応というところ。部屋は清潔だが、とても狭いので、あまり落ち着ける雰囲気ではない。
夕飯は、空港のフードコートで済ます。ホテルにはカフェくらいしかない。このあたりの徹底ぶりは、さすがLCC経営といった感がある。

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