倦怠、興奮、バンコクにて

一昨日の深夜にバンコクへ到着。昨日は有名寺院を巡ってからカムティエン夫人の家、サヤームスクエアの有名店マンゴ・タンゴでマンゴデザートの盛り合わせを食べ、新装オープンのサイアムパラゴンにある水族館、それからインドラ・リージェントホテルでタイダンスディナー。

まあ、「はじめてのバンコク」一日目、といったところ。もちろんバンコクには何度も訪れているのだけれども、今回は訪タイ初めての同行者がいるせいで、久しぶりにワット・プラケオはエメラルドブッダのご尊顔を拝んだりした。

うだるように暑いし、Tシャツひとつ買うにも交渉が必要だし、排気ガスはひどいわトゥクトゥクの運ちゃんはボるし、げんなりしている同行者の横顔を見ながら、僕は少し懐かしくなった。

僕が初めてタイに訪れたのは11年前のお話で、そういえば書きながら数えてみれば、まだ十代だった。ドンムァン空港に降り立った足でそのまま北のアユタヤへ向かい、駅舎を出てみれば乾いた砂ぼこりの道に、バラックみたいな商店が軒を並べ、むわっとする香辛料のにおいがたちのぼっていた。そのとき、僕は本当にこの国を独りで旅することができるのかどうか、心から不安に思った。

あの時に刻まれた不安と、初めて見るタイの景色と、言いようもない興奮は、僕の原初体験なんだろうと思う。
もちろんもう二度とその思いをすることはないのだろうし、無いものねだりなのはわかっているけれど、僕がアジアに足を向ける理由のどこかに、その心の震えへの追憶がある。だから、今回もタイに、いる。何を見ても物珍しげな、同行の横顔を羨ましく眺めながら。

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