一念岩をも通すとはよく言ったもので、周囲には一念通してしまった人が多い。記者になるといって記者にめでたくなった人、学者になると思いこんで学者(の卵)になった人、社長になると言った人はいまや「俺の天職は社長だ!」と公言する立派な社長さんだ。
個人的にも、この20代前半は「思いこんだこと」をとりあえず実現した5年間だった。贔屓目にも成功とは言い難かったけれど。
「やりたい」と言い続けていれば自然と足はそちらに向き、大概のことは叶う、というのは実感として正しいと思う。
そんな中で、絶対に言ってはならない台詞が一つだけあるんじゃないか、とも思う。
「人と『違う』ビッグな人間」ってやつだ。
これを口にして失敗していった人を何人か見ているし、自分も危うく道を踏み外しそうになった。ビッグな何かとは、同時にハイリスクな何かでもある。「とても異なるもの」なんてそこらに転がってるものじゃないし、得ようとして得られるものでもないような気がする。アプリオリに存在する異質性など、異質でも何でもない。「既にあるもの」でしかない。
「気がついたら、ちょっとだけ違ってたよ」
そんなものが将来手に入ればいいなと思う(ついでにニカッと笑ってられたら尚のこと良し)。
それが何かは全然わからないけれど、わからなくて結構。
今の僕にわからないから、求める価値のある「違う何か」なのだ。