ライブドアの波紋からしばらく経ち、まるでナポレオン死後の王政復古みたいに、アンシャンレジュームがまた勘違いなことをはじめている。
テレビ朝日の広瀬道貞社長(70)は26日の会見で、民放テレビのキー局に対する敵対的買収への備えとして「民放キー局間で株式を持ち合うことを研究してはどうか」と発言、キー局が互いに安定株主となることで買収しにくくする手法を提案した。民放テレビ局は電波を独占的に利用する“既得権化”がしばしば問題視されてきた。広瀬社長は持ち合い比率について「例えば2%ぐらい」としたが、業界が結束して買収を通じた新規参入への道を狭めるものと受け取られかねず、今後、波紋を広げそうだ。
もちろん買収阻止のために持ちあいをするのは手段のひとつであると思う。ただ、それを共通利害を有する仲間うち同士で行うことが、結果的に公益ではなく狭いムラ社会の既得権益を保護することになることでしかないことに思い至らなかったのだろうか。よしんば彼らの本音がそこにあるのだとしても、このタイミングでこういう発言をすることが世間でどのように思われるかということを予想できなかったのか(しかもたった2%の持ち合いって、ムラの象徴以外の何の戦略的意味ももたない)。独禁法にはさすがに抵触しない比率だと思うけれど、立法趣旨って言葉をしらないのか(ひょっとすると妙なファンドでも作って脱法でもするつもりか)。結局テレビ局のえらいさんは、想像力と戦略構築力があんまりなくて、おまけに自省もできない破戒の番人ってことを白昼の下に晒しただけだ。
それを考えると、ホワイトナイト然として登場し、新たな「オトナの融合スキーム」を提示したSBI北尾氏は、まだしも自分の行動が世評にどのような影響をもつかということを理解していたなあ、と思う。
(マス)メディア・パワーがややもするとリヴァイアサン的な存在になってしまうことに、メディア業界の人間は自戒するべきだと思う。と、いちおう僕もかなり隅っこの方で自戒してみる。
参考:
在京キー局の株持ち合い問題をIR的に考える
何かおかしい 民放株式持合い案