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便利さはブランドを損なうもの? Samantha Thavasa が仕掛ける3Dショッピングサイト(japan.internet.com)
株式会社 WW by Samantha Thavasa は13日、3Dインターフェイスとコミュニティを備えたオンラインショッピングサイト「WWCITY&Communication」を発表した。8月20日よりテストオペレーションを行い、12月に正式オープンする予定だという。
WWCITY&Communication のコンセプトはインターネット上に“街を新しく立ち上げる”というもの。ファッションブランドをはじめ、インテリア、美容室、レストラン、銀行、映画館など、リアルの街に存在するショップをオンラインに持ち込む。 「ショッピングとコミュニケーションが一体化した新感覚の EC サイトを目指す」と WW by Samantha Thavasa 代表取締役社長の寺田和正氏。
同サイトの特徴は実在する街並みを3Dで表現したインターフェイスだ。トップ画面から渋谷、新宿、銀座などの“街”を選択すると、実際に訪れているかのような立体的な街並みが画面に再現される。画面に表示されている道は進んだり、戻ったりすることができ、左右に曲がれば道沿いの店舗に入ることができる。ウィンドウショッピングの感覚に非常に近い。
バーチャル3D画面で、『シムシティ』や『A列車で行こう』のような画面を、マウスで操りながら買い物させるのね。たぶん。
これは壮大に失敗しそうなんだけれど、担当者のコメントがまた強気で、おまけに認識がかなりゆがんでいる。正直なところ、読んでいささか腹が立つ記事だったので以下感想。
画面右のサイドバーにはインスタントメッセンジャー画面が表示されており、友人とリアルタイムにコミュニケーションをとりながら同じ街、店舗、商品を閲覧することができる。
ただでさえバーチャル3D空間のUIを把握してアクションしなければならないのに、「買い物について考える」+「複雑な空間の操作をする」+「友達とコミュニケーション」と、multi-functionalにいろいろするものだろうか、ふつう。まだskypeでおしゃべり、ならありかもしれないけれど。
それに、時間的制約から解き放たれて買い物できるのがECのいいところなのに、友達と一緒に、という制約をかけてわざわざ買い物するだろうか。
また、Blog や SNS などの機能も実装、新たな友人との出会いも支援する。
このあたりは年代によって評価が分かれるかも。女子高生ならありだけど、僕なら自分の買い物を逐一他の人に見られながら、という感覚はかなり辛い。デジタルに自分の趣味嗜好をウォッチされちゃうからね。
Samantha Thavasa は WWCITY の構想に4年を費やしたという。
苦笑。
これまでリアル店舗がネットに進出してこなかった背景には「ネットの便利さがブランド価値を毀損する」(寺田氏)という要因がある。“いつでも”“どこでも”“安く”という手軽さを実現してきたインターネットビジネスは、ブランドの価値と相反するものであると同氏は指摘する。
アップルコンピュータは数少ない直販PCサイトの成功事例(しかもこのジャンルは、一番価格下落が厳しい)だけれども、ブランド評価では常に上位だ。リアルとネットを峻別して語っているけれど、リアルコマースだろうがネットだろうが、
『価格でしか勝負できないブランド』
『価格が安い類似品には勝てない程度のブランド』
『価格以外のバリューがあるブランド』
に分かれるだけで、素人な僕から見れば、サマンサタバサは『価格が安い類似品には勝てない程度のブランド』なだけなんじゃないだろうか。
またもう一つの問題点として、「ネットは偽者と本物が混じっているモラルのない世界」とも断じた。
(偽物が混じると噂される)ディスカウントストアのブランド品、あるいは正規とはいえ並行輸入品についてはどうなんでしょう。リアルでも普通に混交していて、安いものがほしい顧客はそちらに流れているだろう。
ネットだから混じるのだ、という感覚が、こういう意味不明なサイトに結実するのかなぁ。
同社が目指すのは、効率的な便利さよりも「楽しい」「安心」「ここで買いたい」といった感覚をプラスした付加価値ビジネスモデル。そのためオンラインショッピングならではのインターフェイスである「検索」にもある程度の制限をかける考えだ。
この文章について、リアルとオンラインを倒置してみると
『(リアル店舗出店にあたって)「楽しい」「安心」「ここで買いたい」といった感覚よりも、効率的な便利さを追求した機能重視ビジネスモデル。そのためリアル店舗ならではのインターフェイスである「店頭商品陳列」にもある程度の制限をかける考えだ。』
となるわけで、このモデルがどれほどナンセンスな定義か良く分かる。販売チャネル特性を無視したUIは、他サイトでのCustomer habitをまったく無にしてしまうわけで、共有できる蓄積知=他のサービスの利用で学習した能力を、自社のサービスでも使ってもらうことを、自分から放棄することにほかならない。
具体的にはトップページから全商品をダイレクトに検索できるような機能は搭載せず、街ごとでの検索のみ可能となる。「高度な検索機能は大根とダイヤモンドを同列に扱うことになるが、エリアごとでの整合性がとれればブランドが毀損されることはない」と WWCITY 事業部 営業企画課長の山川智史氏。
この人たち、実はブランドについて何も分かっていないのかもしれない。
検索というのはユーザ主導型の行為であり、だからこそ検索用のテキストボックスに入力したキーワードが「大根」と「ダイヤモンド」に分かれていることそれ自体のお蔭で、そのキーワードを入力してくれたカスタマーのブランド志向が判別できる大変有り難い機能なのだ。
顧客自身のニーズや志向をわざわざ企業へ提供してもらえる機能を削ることで実現できるのは、ブランド毀損の防止じゃなくて、ブランド志向が不明瞭な顧客が流入したり、あるいは自社ブランドへの潜在顧客がたどりつけなくなるだけじゃないのか。
いまや iTunes Music Store の曲も検索可能となった「Yahoo!商品検索」への対応は、今後の検討課題だという。
Rejectしたら、「サマンサタバサ」って入力してくれる顧客を取り逃がすんだ、ということに気づかないのかな。わざわざ自社商品を探してくれる、一番ブランドに固着している顧客が逃げる(笑)。
ルミネ代表取締役社長の花崎淑夫氏は理事を代表してこう語る。「我々の店舗は単に便利ならいいという世界ではない。便利というだけで無秩序に商店が並ぶ状態とは一線を画すものだ」
便利に並んでいるのだったら、無秩序なわけがないのだけれども・・・。
正確に言えば、ECサイトでは、彼らの商品やブランドが『販売者の意向にそぐわない』秩序で並んでいるわけだ。それは価格であったり、あるいは他社の類似商品とのリスト化であったり。
逆に言えばECサイトが誕生する前は、いかに自分たちが価格あるいはその他の、消費者にとって大事な要素を隠蔽して勝負してきたか、ということなんじゃないのか。
だから、価格比較、あるいは他社との商品比較、そういう機能をまさに覆い隠すようなインターフェイスのサイトを作る。
そう、これが彼らお好みの世界。
迷子の中で蜘蛛の巣に絡め取る商売。
それが通用するかどうか、楽しみに見せてもらいましょう。
で、僕は二度とSamantha Thavasaで(プレゼントとかの)買い物しないことを決めた。でも、理事の一社である伊勢丹では買い物するかなあ、何だかんだいっても。
これがブランドの差、というものでしょ(笑)。
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はじめまして。私はWWCITYのプロジェクトと利害関係は全くありませんが、WWCITY期待・肯定派です。
アパレル系は、書籍や家電製品の販売などで画一化されてしまったショッピングサイトの構造が適合しない世界と考えます。
潜在的な市場はあるのに、つまらない売り方しかできていないというものです。
小さい子供がいるので店に行けない、遠隔地に住んでいる、仕事の都合で営業時間に脚を運べない、容姿、体型へのコンプレックスにより、憧れのブランドショップに入りづらいなどの悩みをネットの利用で解消している面もあり、前述の「画一化されたつまらないショッピング」を強いられている側面も。諸事情で店頭にてショッピングができない消費者が、これまでのつまらない、不快感を抱くような体験から、良い体験へと変化できるのではないか。
というのが意見です。
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