韓国と日本文化(中央日報を読んで)

個人的にはリベラルでいたい、といえばネット上ではサヨクのレッテルを貼られることになるのだけれども、まあニュートラルでいたいとは思う。のだけれども、たまに首をかしげざるを得ない。

1000年前の小説まで…日本の小説、なぜ人気?

いまや日本小説全盛時代だ。
(中略)
こんな中、ただ見過ごせない小説がまた出版された。日本が世界最古の小説だとする『源氏物語(ゲンジイヤギ)』(全10冊、ハンギル社)だ。ノーベル文学賞受賞作家の川端康成が「これに比べれば私のは小説はではない」と称賛し、韓国の識者の間でも原語そのまま(げんじものがたり)で通じる、日本文学の源流のような古典だ。

良い本に国境があるのかとはいえ審査が複雑なのは仕方ない。取るに足りない民族感情なんかが動いたのではない。そうでなくても息苦しいのに1000年の歴史の日本の小説を受け入れて肩身が狭い。

日本小説全盛時代だ。どうしたらいいか。

どうしたらいいか、とわざわざ書いているので、過去の歴史的経緯から日本文化の流入に障壁を設けてきた韓国(の活字メディア)としては、日本語小説がじゃかすか流入することに憂慮している、というのがこの記事の趣旨なのだろう。嫌韓流がベストセラーになりながらも、焼肉屋は繁盛してキムチもよく売れる日本と比べたくなるけれど、まあ優劣つけちゃいかんよな。文化の流入に対する態度に。とここまではまだ両論賛成でいきたいところです。

で、この結論的な所感に「?」となった。

良い本に国境があるのかとはいえ審査が複雑なのは仕方ない。取るに足りない民族感情なんかが動いたのではない。そうでなくても息苦しいのに1000年の歴史の日本の小説を受け入れて肩身が狭い。

日本語としてよくわかりません……。海外メディアの邦訳版とはいえ他の箇所の日本語は適切なので、たぶん元の朝鮮語版からおかしかったのかな。なので、僕が超訳してみたよ。

良い本に国境はあるのかとはいえ(過去の侵略の歴史的教訓をふまえれば、書籍についての)審査が複雑なのは仕方ない。(しかし、その審査体制をしても文学流入の圧力に抗しきれない現状への、この複雑な気持ちがなぜ生じたのかといえば、)取るに足りない民族感情なんかが動いたのではない。(今や一過性のトレンド小説だけをとってみても日本文学が韓国文学を圧倒しているせいで、)そうでなくても息苦しいのに(それに加え、ウリナラにも長い民族の伝統とそれが紡いだ歴史的文学があるにもかかわらず)1000年の歴史の日本の小説を受け入れて肩身が狭い(し、民族の誇りはどこへいった!!)

僕、小学校からセンター試験にいたるまで、国語の成績は良かったよ。
悪くはない、と思う…。

ええっと、これが「火病(ファビョン)」「ウリナラ精神」ってやつなんでしょうか。ふだんそういう言葉を使いたくないと思っている僕でもそう言いたくなる。少なくとも今現在の先進国で、ある一部のメディアジャンルにおいて、その大多数が海外産になったことで大騒ぎする国はあんまりないと思う。それは、

・文化の資本蓄積が進んだ国では、民族的アイデンティティーはそう簡単に表層的なものでゆらぐものではない。
・例えば日本では、衣食住とも戦後60年でかぎりなく欧米化した(=それ以前の生活習慣とはほとんど断絶した)にも関わらず、言語礼儀その他のエートスはやはり『日本的』というべき固有のものが生き続けている。
・だいたい文化なんて、流出入と融合を繰り返して日々流転していくものだ。

みたいなところを、体感的に理解しているからなのではないか、と思う。
だから、別に韓国でも大騒ぎするほどではないし、せいぜい「日本の小説が韓国でベストセラー、ヨン様は日本で知らぬ者はいない」とでも書いて文化の双方向性と友好を賞賛すればよいのに、と思う。

ではなく、この記者は、日本の歴史的文学が出版されることに納得いかない、という感情のほうがはるかに強いのだ。源氏物語くらいになれば、もう国境を越えた文化遺産じゃないか。仮に日本がイギリスと戦争しても、日本からシェークスピアが消えることなんてない。それは人類という上位レイヤーでの共有財産だからだ。
それでも日本文化の侵略といって騒ぐことなのか。日本文化が韓国文化以上に売れることが許せないのだろうか。そういう発想は、自国が文化的先進国になるためのくびきになってしまっているのではないだろうか。そこを乗り越えて啓蒙することこそが、マスメディアの指命なのではないだろうか。

と、こう書いてしまうのも、それは僕が日本人なのだからだろうか。
いちど、韓国人とこういう話題で胸襟を開いて話し合ってみたいなあ、と思う。
もちろん、友好のために。

Similar Posts:

カテゴリー: B:マジメな話 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください