南国の寿次第-18:旅に倦んで 2009/01/04

今日は完全に妻がダウンしている。朝食も少し手をつけただけで、部屋のベッドに転がっている。元気ならレンタサイクルでも借りて近辺の遺跡や田園でも巡るかね、と思っていたが、これではなすすべもない。
「出かけてこれば?」と彼女は言うけれど、さすがに放ってもおけないので僕もヴィラでのんびりすることにする。外は陽射しも強いのだけれども、屋根の下には広々としたデイベッドがあり、東屋もあり、おまけに10mほどのプライベートプールまで備わっているので、水着に着替えて飛び込みクールダウン。落ち着いたらデイベッドで読書。垣根の外は、田んぼをアヒルの親子が泳ぎ、虫でも食べているんだろうか。まことにのどかな光景である。ヴィラの裏手には半屋外のレストルームとバスタブがあるけれど、そちらに行くと植物がきれいに植わったスペースと小さな池があり、魚とカエルがいたりして、たまにケロケロと鳴いている。毎朝食パンを少し残して、こっそり餌付けをしていた。暑いながらものんびりとした時間だ。

14時過ぎには妻が外に出たい、というので外出。昼食もとっていないので、ウブドの中心部にある有名な「カフェ・ワヤン」でビーフステーキ、彼女はラッシーを飲む。ここは板縁の東屋風のつくりになっていて、店内はジャングルのミニチュアのように樹木が生い茂っており、ウブドのど真ん中にいるとは思えない。ステーキはたぶんオージービーフで、味もまあまあいける。ドリンク2杯ぶんの料金とあわせて、90,000Rp.(=¥800)。

ウブドではガムラン、そしてケチャを観たけれど、まだ味わっていないのが竹楽器「ジェゴグ」によるガムラン。開催日だけ調べておけば、あとは王宮前のインフォメーションセンターに行き、チケットを買うだけというなかなか手軽なシステムが、だいたいの楽団を対象に実施されている。郊外の村で行われるジェゴグの公園は1人160,000Rp.(=¥1,400)。ほかの公演に比べても高いのだが、集会場までの往復送迎付きとのこと。公演は夕方からということで、王宮の東側にあるカフェで一休み。ここは日本人が経営しているそうで、ほんとうに久しぶりの日本の新聞を読んだ。ちょうど元旦の日付。ふらふらのんきに旅している間に、クリスマス、大晦日、正月がぜんぶ通り過ぎている。赤道を越えたところにいると、あの日本の年末年始の喧噪など思いもよらぬ、淡々とした時間が流れていくだけだ。

けっこうぎゅうぎゅう詰めになったマイクロバスで、北方の村へ車で5分ほど。トタン葺きの素朴な演芸場に、一抱えほどもある太い竹で作られたジェゴグが飾ってある。いざ始まってみると、重低音がすさまじい。澄んだ金属音のガムランとは、また違った趣だ。ジェゴグの本場はバリでも西方の田舎であり、そこで聴くそれは、この比ではないという。

今日の夕食は、今回はじめての日本食。ふだん一緒に海外を旅していても日本食を食べることがない僕らだが、さすがに妻がもう油っこい料理は受け付けない。「影武者」という日本人経営のレストランで、かまちから上がりあぐらをかいて座ると目の前には真っ暗な田んぼ、という、それはそれで日本的な風情とも言えなくはない。ほうれん草のおひたし、じゃこおろし、味噌汁、イカフライ、カツ丼、というずいぶん脈絡のないオーダー。味は日本の定食屋と変わらないのがうれしい。本棚には日本の本や漫画が置いてあり、僕らは「美味しんぼ」を読みながら食事をした。ほんとうに国内とおんなじだ。これで料金は300,000Rp.(=¥2,700)。バリ島で本物の日本食が食べられたということで、納得する。こうして長い旅の最後の夜が更けていく。旅が当たり前の日常だった日々ともお別れだ。

竹の楽器、ジェゴグで演奏されるガムランの音は圧巻。

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