1997/10/09 10日目

 さて、今日は旅の最後の日。なんだか、実感がない。感傷に浸る気分でもなく、いつもと同じようにゆっくりと起床し、昨日と同じように船でバンコク中央駅へ。駅のクロークに荷物を預け、ぶらぶら歩きでチャイナタウンへと足をのばす。

 中国語の看板、漢方薬の店、中華料理の屋台と、さながら香港のようである。東南アジアには、ちょっとした街なら必ずチャイナタウンがあるが、すごいことではある。中国人のたくましさは、その土着性にあるような気がする。

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 バンコクはフカヒレが安い、と聞いていたので、街の中心にある立派な料理店に入る。メニューを開き、フカヒレスープ、鮑ご飯、燕の巣のスープを頼む。中華三大珍味揃いぶみ、である。一番安いフカヒレを頼んだのだが、それでも日本で食べるそれとは比べものにならないほどの、フカヒレの塊がごろごろと入っている。干し鮑のダシがきいた鮑ご飯もよい味である。濃厚ではあるが、あっさりとした食べ口なので、日本人にも違和感がない。しめて650バーツ。まわりを見渡すと、小金持ち風の中年男女がいるだけであり、ジーンズ姿の若者は私一人である。……ジャパニーズ丸出しの昼食ではあったが、味も値段も満足いくものであった。

 昼過ぎの列車で空港に向かう。ここでも、旅の余韻にひたるほどの時間はなく、数十分でドンムァン空港駅に到着。客の乗降がすむと、列車は待ちかねたかのように走り出す。徐々に加速して見えなくなっていく列車を、何とはなしに眺め続けた。

 空港では待ち時間にくたびれて、カフェでカプチーノを飲んだ。思えば常にコーヒーを飲み続けた旅だった。いささか気だるい雰囲気がつきまとったけれど、それはそれで、わるくない。

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