1993/11/18 牛乳と蕎麦

(太字:当時の日記より)
(細字:注釈)

 前日米子から乗った上り「だいせん」から、香住駅で下り「だいせん」に乗り換え、松江まで折り返す。

08:35
 (松江駅で)コンビニで買ったおにぎり、パン、牛乳で朝食。白バラ牛乳は置いてなく、「木次パスチャライズ牛乳」を買う。低温殺菌なので20円ばかり高い。

 山陰に来て思ったのだが、この地は非常に牛乳が旨い。中国山地にある牧場の、良質な牛乳のせいなのだろう。毎日牛乳を飲むのが日課という、それはそれで健康的な生活の中で、いつも飲んでいた「白バラ牛乳」がここにはなかったのである。

 今日は列車に乗るだけで一日がかりである。ヒマである。
 空は明るみ、流れは目的を持った人ばかり。 自分はぽつねんとベンチに腰かけている。いったい何者?何者でもいいが、目的のない行為をするというのはやはり求道ではないか。

 それなりに当時は本気で書いた文章なのだろうが、わざわざ無目的の行為を、予定を立ててまで実行し、「求道」というのはただの自己弁護であろう。若かったんだなぁ。
 この後、宍道湖を眺めながら宍道まで移動。木次線というローカル線に乗り、再び中国山地へ舞い戻る。

10:05
 空はきれいに晴れた。もっとこの調子であってほしい。宍道湖では小舟が水面 に竹竿をつきさしていた。しじみ採りだろうか。(中略)
 眠い。列車に乗ればすぐ眠くなる。疲れだろうか。

10:42
 (宍道からの列車の車内で)整理券を出す機械。アカンベをした子供がふんと横を向くよう。どの路線も一緒に感じる。ディーゼルカーが新しいことだけが違いだ。段々のたんぼが見える。が、「耕して天に至る」というのにはお目にかからない。

 途中の亀嵩という駅で途中下車。駅で蕎麦を食わせるという有名な駅である。

12:33
 亀嵩の蕎麦は旨かった。蕎麦の旨さは説明しようがない。信州や飛騨よりも旨い。当地は蕎麦と牛乳が一等である。

 この時の経験から「蕎麦は出雲」という、今に至るまでの出雲蕎麦信仰がつくられる。しかし、ただ単に腹が減っていただけなのでは?という疑念も湧かぬ ではないが、青春を冒涜しそうなので、やめておこう。

13:43
 出雲坂根という山間の小駅で、延命水という齢数百年の狸が飲んでいたという湧き水を飲んでみる。格別 旨いとは思わない。

14:30
 一面びっしりと杉ばかり生えた山々。植林のせいだろうか。美しかった。点在する松は大きく、庭園などに植えてあるものよりはるかに素晴らしい。これが松かと見紛うばがりの巨大さである。
 屋根にしゃちほこをのせた家が多い。鳥取から出雲まで、どこでもそうである。

 この後も木次線に乗り、中国山地の真ん中に至る。一昨日通過したあたりである。新見という町から米子へ向かう途中で日が暮れ、さらに海沿いに鳥取まで行く。この日の夕食はなぜかモスバ-ガーであった。そういう年頃だったのだろう。
 今夜の宿も上り「だいせん」にするつもりで鳥取駅の構内に入り、仮眠する。


今日の使用金額 2461円

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