グレート・人生

この冬休みには『グレート・ギャツビー』を読んでいたのだけれども、僕の買った集英社文庫版には丁度フィッツジェラルドの生涯年表がついていて、フィッツジェラルド的な生き方にいささかの憧れを抱かぬでもない僕にとって、本編並みに興味深かった。

1902年:6歳
自分は王家の血をひく捨て子だとの空想にふける。
1913年:17歳
プリンストン大学受験失敗。カンニング効を奏さず。
1915年:19歳
学業不良のため病気を口実に休学、帰省する。
1917年:21歳
少尉任官試験に応募。基地にブルックスブラザーズ仕立ての軍服で出頭。訓練をエスケープする「世界最悪の少尉」をもってみずから任じ、勤務時間外は将校クラブで英雄的な戦死を夢想しつつ小説書きに没頭。
1919年:23歳
ゼルダ文無しの無名作家との結婚に不承知。一旗揚げるため出郷、広告代理店に職をえるも薄給。
(その後処女作『楽園のこちら側』出版)
ゼルダ結婚に同意。
1920年:24歳
収入毎月倍増の勢い。ゼルダと結婚。新婚生活をビルトモアホテルでおくるが、静穏を乱し追いだされる。
1923年:27歳
不眠症亢進。
1924年:28歳
ゼルダ仏海軍飛行士と恋愛、自殺未遂。ローマで酒に酔って警察といざこざ、イタリア人嫌い昂じる。
1925年:29歳
ヘミングウェイにパリのディンゴ・バーで会う。ヘミングウェイとゼルダ反目し、「彼女は頭がおかしい」「あいつはニセものだわ」とそれぞれ注進。
1928年:32歳
ジェイムズ・ジョイスに会い、天才に敬意を表して窓から飛び降りようとしてジョイスを困惑させる。
1929年:33歳
ヘミングウェイ住居を明かさず、両者の仲きしむ。ゼルダ、バレエと小説に力を酷使、神経が極度の緊張状態におちいる。
1930年:34歳
ゼルダ入院、精神分裂症の診断をうける。
1933年:37歳
マルクスを読み共産主義に傾倒するが、みずからの文学との接点見出せず。ゼルダが暖炉で古着を燃やしぼや。
1935年:39歳
作品の質の低下いちじるしく雑誌社からは掲載拒否あいつぐ。書けない自分を書けとの提言を受けて自己省察のエッセーを書く。
1936年:40歳
<ニューヨーク・ポスト>紙が「楽園の裏側」と題するゴシップ記事を掲載、衝撃を受け自殺未遂。
1937年:41歳
脚本共同執筆。制作者の手で全面改作されたことに抗議するが、皮肉にも翌年公開の映画は大ヒット。
1939年:43歳
飲酒のため心神耗弱状態となり入院。ゼルダとキューバ旅行に出るが飲酒のコントロールきかず入院。
1940年:44歳
心臓発作で死去。

華麗なるも波乱の彼の生涯と、ふつうの人生とどちらが幸福であるのか、悩ましいところだが、・・・悩ましいと思っている時点でお前はおかしいのではないかと、我を省みてみることにする。しかしまあ、羨ましい人生だ。男子の一生斯くありたいものである。

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