リセット
★★★☆☆
北村 薫 (著) 新潮文庫
北村薫の時間もの三部作の三作目。輪廻転生をテーマに、恋人たちが時を経て巡りあうお話。
中は三部構成なのだけれども、ストーリーの半分くらいまで読み進めるとオチが見えてくるのが辛い。ハッピーエンドを前提にした物語の難しいところだと思う。
人を思う心の永遠さが、時間の流れの中、人物の移りかわりの中で重層的に描き込まれていく構造は良いのだけれども、話の展開がモロバレになった第2部の途中あたりから、とたんに筆致のスピードが速くなっていくため、構造の奥深さが追求できていない。もう少し冗漫になっても良いから、心の葛藤を描き込んでほしかった。