カッコつけるのは勝手だが損をするのは御免です。

総選挙関連のエントリを書いたら、のまネコなみにPVが伸びた。

政治的信条は人それぞれ、ということで、僕もついでに好き勝手書いてみる。

昨日書いたとおり、小泉政権はブッシュドクトリンへの擦り寄りによるアメリカ追随がその外交政策の全て、だと思っているが、あわせて極東域内での強硬姿勢が露骨な政権でもある。
嫌中・嫌韓ブームの中で、ポピュリストとしての政権維持を図るという趣旨であれば、かつナショナリズムというかナルシシズムの発露によるガス抜きという趣旨であれば、それは実に民心を得たやり口だ。

小泉選挙の勝利の要因として、第一義的には郵政民営化で見せたファナティックなまでの一途な姿を改革と刷り込ませたマスコミ操作につきるが、バックグラウンドとしての対極東のタカ派外交も、ある一定量のファクターとして影響を与えた気がする。
両方とも、要旨は『強くてかっこいいこと』であり、それによる国民の幻惑を勝ち取る手法はアジテート型政治にほかならない。

僕個人の立ち位置をはっきりさせておくと、もちろんリベラルへの同調もあるのだけれども、それ以上にエコノミック・ジャパンの一員として、小泉政権の外交姿勢じたいがチキンゲーム的な危うさを露呈しており、それが確実に経済的リスクに直結していることを容認できないという認識に依っている。

アメリカとの強固な同盟=アメリカニゼーション、それに郵貯民営化=国民資本の総流動資産化がもたらすものは何なのか。カトリーナ・ハリケーンがさらけ出した、アメリカのような不安定な社会を作る方向になぜ進むのか。そしてその不安定リスクに対する果実は、かなりの部分を欧米金融資本に持っていかれることも目に見えているのではないか。僕らはバクチのタネ銭だけ払わされるってところだ。

そしてもう一方にある対中・対韓軽視も、経済的に見ればかなりハイリスクな馬鹿騒ぎに近い。
2003年度のデータでは、中韓合わせての輸出額は対米比80%、輸入額に至っては160%に達している。これだけの貿易相手国との感情的悪化が、将来の成長も加味すればどれほどのロスになるか、考えた上でのやりようなのだろうか。

それでも国としての美意識にこだわるというのなら、それは(皮肉抜きで)確固とした見識だと思う。日本はゼニ儲けより、美学を追究する国家です。と言えばいい。しかしそこまでの見通し無しに改革とナショナリズムを叫ぶ姿勢は、国家戦略として是認できるのか。
小泉首相が、それを知っていて推し進めているのならばもっと罪深い政治だと思う。

そのあたりをどこまでメディアが意識しているかどうかはさておき、国を挙げて改革の美名に酔い、改革がもたらすリスクを省みることがない世情を煽ったのはマスメディアである(さらにいうと、それを増幅させたのはネット・コミュニティだ)。
本来はそこで誰かがきちんとリスクマネジメントをするべきであり、ヨーロッパ諸国では複数の新聞やテレビ局が論陣を張ることにより、カウンターパンチによるリスクヘッジを行っている(ように、少なくとも日本からは見える)。

政治的にはそのカウンターパートを担うのは野党という存在の筈で、小選挙区導入後の日本では、いちおう建て前として二大政党制によるチェックアンドバランスで歯止めをかけるということだったにもかかわらず、選挙結果は大政翼賛会みたいになっている。

自民党が勝ったことが悪いわけでも、アメリカニゼーションとブッシュドクトリン追随による改革が悪いわけではない。それを大多数が望むなら、民主主義国家としてみんなで危ない橋を渡ればいい。だけれども、アンチテーゼの議論なしで話が進むこの国のメンタリティーは、バクチで言えば確実にヤバい一点張りにしか見えない。

僕は自分の懐が「大損するリスクが高まる」話になるのが単純にイヤなだけだ。イデオロギーの問題なんかそれに比べれば正直どうでもよくて、そこが納得できない理由なのだ。

ちなみに、比例区の当選議席数は自民77に民主61。ほぼ拮抗している。比率的な民意はおそらくこのあたりにあるにもかかわらず、小選挙区で一人勝ちすることが容易な制度が今回の結果を産んだ。多様化する社会に対応するというのは、自称自由主義者の決めゼリフだが、これを見れば彼らの自由思想がいかに都合が良い方便であるかが看てとれるんじゃないか。

■参考
結構同意見の人が多くてほっとしています(苦笑)。

新自由主義の「自由と必然の王国」へ(世に倦む日日)
植民地ファシズムの壮大な実験(とりあえず)
クズの国のカスによる選挙になるのか、今日は曇り空(blog::TIAO)
つまり、実力も本来の姿も示せなかった事に尽きる(徒然閑話)
”家畜”になりたがる人々(ろうびじ)
異議異見を許さないポピュリズム社会化(Radical Imagination)
ブログと民主主義(そぞろ日記)
小泉流“改憲のシナリオ”(Dense Fog Ahead)
自由は死んだ、万雷の拍手の中で。(愛と革命のために)

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9 Responses to カッコつけるのは勝手だが損をするのは御免です。

  1. ピンバック: そぞろ日記

  2. ピンバック: 名無しの芸能観察記

  3. unclemac のコメント:

    TBありがとうございます。
    「世に倦む日日」なんて、とても気に入ってます。こちらのブログをリンクさせて頂きます。マズければ、コメ連絡ください。
     所で、こちらのは、個人でサーバを建てておられるのですか?憧れますねえ・・。

  4. ピンバック: 非国際人養成講座

  5. ピンバック: blog::TIAO

  6. ark のコメント:

    ああ,ここがもっとも私のスタンスに近いなあ.

    経済的側面から見たら小泉改革というのは不況驀進改革ですよ.だって小さな政府にするということは政府支出をすくなくするということでしょ?現に公共投資は年々へっている.で,公共の支出が減った分,減税して個人消費を増やすなら民間の方が市場原理で資本を有効利用してくれるという解釈もなりたちますが,将来的には高齢化社会を言い訳にして増税するわけでしょ.そしたら個人の使えるお金もへるわけで,どうしたって個人消費も減るでしょう.そしたら,不況になるのは必然.

    公共の支出を減らして増税をしたら消費がへって不況になるなんてことは経済の初歩だと思うのだが,なんで竹中大臣はそんな改革をすすめているのか.あの人は本当に経済学者なのだろうか?

    まあ,それでも不況にならない方法がないわけではないです.それは消費が抑制された分を輸出でかせぐか,今までためこんできた貯蓄を消費して増税分の消費減少をおぎなうことです.

    さて,どの方法が不況対策としてとられるんでしょうか.それとも何もせずに不況突入かな?

  7. ピンバック: ムリジン

  8. algezira のコメント:

    書いてたら長くなったので自分のサイトに載せました。

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