南国の寿次第-17:ウブド滞在 2009/01/03

朝、ヴィラの門をコンコンと叩く音がする。庭に通じる木製の門を開けると、朝食が用意されたお盆を頭の上に乗せ、にっこりと微笑む女性の姿。朝ご飯もリクエストを前日に出しておくだけで、指定の時間にヴィラまで持ってきてくれるのだ。
東屋にテーブルクロスをセットし、朝食のトーストやオムレツ、コーヒーを並べ終えると、来たときと同じくらい、にっこりとした笑顔で従業員は去っていく。こういうところではチップをせがまれたりしないだけに、スマートに渡す用意が問われるというものだ。スマートに渡せたかな、と、自問自答。慣れないものである。

妻の体調がよろしくなく、どうも昨日のクリームソーダにあたったみたいだが、なんとか食事は食べ終え、同じ敷地内にあるアルマ美術館へ出かける。ここはネカ美術館と並び、ウブドのバリ美術が集まっていることで有名で、オランダ植民地支配の中で、西洋画とバリの伝統的な色彩が融合した絵画が多く飾られている。たっぷりと時間をかけて鑑賞し、妻に休むか、と尋ねればウブドの街に出たい、とのことなので、ホテルの車でモンキーフォレストの手前へ。
とりあえず町歩きの前に、たまった洗濯物をクリーニング屋に出す。ホテルに頼むとシャツ1枚いくら、の計算だが、町中の洗濯屋ならkgいくらなので、値段がぜんぜん違う。2人分の下着やシャツをどさっと出し、35,000Rp.(=¥310)。

年末のウブド観光では、妻は家族の買い物につきっきりでモンキーフォレストに入っていないため、あらためて中に入る。入り口では小さなバナナの房が10,000Rp.(=¥90)で売られていて、このバナナを目当てに寄ってくるサルに向けて、一本ずつもぎ取り、投げてやると、器用に皮をむいて食べている。森はかなり奥まで続いており、バリの森の雰囲気をとりあえず味わうなら、まあここがお手軽ってところだ。

そのままモンキーフォレスト通りを、土産物屋を冷やかしながら北上し、お昼はウブド王宮そばの「イブ・オカ」にて、バビグリン(豚の丸焼き)。とはいえここは大衆食堂なので、丸焼きそのものではなく、スライスしたものがご飯の上に乗せられて出てくる。これが安いのにめっぽううまい。香辛料の効かせ方と焼き具合がよいのだろう。体調がすぐれない妻も完食し、さらに散歩を続けることに。
町の北西まで歩き、外れにあるデルタワルタ・スーパーまで。バリ島にはビンタンスーパーというチェーンがそこら中に展開していて、年末に泊まったソフィテルのそばにも支店があり重宝したのだけれど、ウブドにはまだ進出していないらしく、ここデルタワルタ・スーパーが一番大きいそうだ。とはいえ、日本なら田舎町のミニスーパーていどなので、せいぜいお菓子を冷やかしで買うくらい。
さすがに歩き疲れたので、ウブド中心部への戻りはベモに乗ることにする。5分ほど乗って10,000Rp.(=¥90)。タクシーと料金変わらないんじゃないか、と思うので、やはり観光客プライスなんだろうか。

さて、体力があるうちに土産物を買うことに。ふだんはあまり土産を買わない僕たちだが、新婚旅行ということもあり、そこら中にお土産を配らねばならない。かさばらず、現地っぽく、運びやすい、ということでバリのオーガニックな石けんに決定。四角いので鞄や袋にも詰めやすい。
ウブドには日本人経営の石けんショップが数軒あるが、そのうちの「KOU ORGANIC SOAP」へ。籠盛りの詰め合わせなどもあり、土産には最適。僕の分だけで1,005,000Rp.(=¥9,000)も買った。妻も同額程度は買い込んでいるので、そうとうな量だ。値段自体はサイコロ状の小さな石けんが数十円なので、物価から考えればさほど安いものではないが、そこらの土産物屋で買うより質が良さそうで、パッケージも洗練されている。

フットマッサージとカフェで時間を潰し、夕暮れ前にウブドの真ん中あたりにある「パダン・トゥガル集会所」へ。ここではケチャダンスを鑑賞の予定。芸術の町ウブドでは、毎日あちらこちらで様々な芸能が開催されており、ガイドブックにも主な劇団の開催曜日が書いてあるので、いつ行ってもなにがしかの催しが見られるというのがうれしい。
ケチャダンスは以前も見たことがあるけれど、やはりウブドで見るならこれだ、と思う。半裸の男たちが、腰に白黒チェックのサロンをまとい、火を囲み輪になって「ケチャケチャ……」と唱和する。話の筋書きはラーマヤナ神話から取っているので、まあだいたいのところは分かる(個人的には、ラーマヤナ神話は東南アジアを旅するなら知っておいて損はない寓話だと思う。国を問わず、絵や芸能のモチーフに使われている)。
白と黒のチェック模様は、バリでは聖なるものを意味するのだそうだ。白が善、黒が悪、この二つが交差することが聖性なのだというところが面白い。そのバリの価値観は、日本人にも理解できる。白黒の模様がだんだんと闇にまぎれていくなか、男たちの声を聞き続けると、こちらまでこの世ならぬところへ引き込まれる感覚に襲われる。

じゅうぶんにケチャを堪能し、夕食は二度目の「ベベ・ブンギル」へ。しかし、妻はそうとう参っており、もうサラダとパパイヤジュースくらいしか受け付けない。長居もせずに引き上げ、ヴィラに戻ると妻はベッドに倒れ込む。だいぶグロッキーな様子。
「チッチッチッ…」と、どこからかヤモリの声が聞こえる。日本でも「家守」と漢字で書くが、ここインドネシアでも、ヤモリがつく家は幸運が舞い込むという。できれば妻が回復するくらいにご利益があればいいのだけれども、と、詮ないことを願いつつ、就寝。

ケチャダンスがはじまる前の集会所の様子。少し早めに行って良い席を確保するのが吉。 夕暮れが美しいウブド。 白黒チェックの腰布をまとった男たちが繰り広げるケチャダンス。

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