阿修羅ガール

阿修羅ガール
★★★★★
舞城 王太郎 (著) 新潮社


三島由紀夫賞受賞作。知人に勧められて読み始めたけれど、いつの間にこんなパワーのある作家が出てきたんだろう。こういう本を読むたびに、周囲に情報感度が高い人たちがいることを嬉しく思ってしまう。

物語は現代社会のバーチャルさと昔話のプロットを巧みに織り交ぜながら、サイコスリラー風の展開で人の悪意と殺人を描き出していく。心理世界の描写や「あの世」の戯画化が、主人公のあまりにもチープな知識で描写されており、そのチープさにむしろ高校生の純粋さを感じてしまうのは僕だけだろうか。そしてネット社会が産み出す暴徒集団のバイオレンス。何だか全てが本当に薄っぺらく、それがこの物語が語りかける皮肉な問いかけになっている。
最後まで楽しく読めた小説。ぎりぎりのところでエンタメにしているのが作者の腕の見せ所なんだけれども、頁をめくりながら、ハルキストの僕としてはどこか【現実←→心理世界】という世界構成に村上春樹を投影してしまった。

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