旅に出たからといって食事の量が増えるというものではないらしく、今日も朝昼兼用で、屋台で遅めに食事をとる。暑い。リゾート以外は全て快晴、皮肉なものである。
今日は死体博物館に行こうと思う。この博物館はもともと解剖学と法医学のための標本を病院内に一般 開放しているものなのだが、カルト・サブカル志向の日本人や、国内で死体雑誌まで発行してしまう、訳のわからぬ タイ人気質にマッチして、今や新しい観光名所になってしまったところである。チャオプラヤー川の東岸にあるカオサン・ロードとは川を挟んだ対岸に位 置するので、川べりまで歩いて船に乗る。バンコクの市内バスの路線は迷宮のように複雑で、地図なしでは乗りこなせないことで有名だが川を行くボートもそれに負けず劣らず混み入っており、乗り場のおばさんに乗るべきボートの番号を教えてもらう。
悠々たる大河も、バンコク市内では限りなくドブ川のように濁っている。そ知らぬ顔で、伝統のワットはその向こうにそびえて見える。
10分ほどでボートはトンブリーに着く。このバンコク西部のトンブリー地区のシリラート病院内に、その博物館はある。
やはり観光客が多いらしく、「シーウィー?」と博物館の名前を口に出せば、構内の職員は慣れた手振りで「あっちだ」と教えてくれる。博物館は狭い部屋で、中にはひたすら死体が所狭しと並んでいる。脳の断面 、奇形の胎児・・・。数分で気味が悪くなり、外に出る。きゃーきゃー言いながら、家族連れで楽しそうに見学しているタイ人たちが、正直言って分からない。七代たたられそうなので、写真は撮らず。
げんなりしながら、また船着き場から船に乗る。10バーツで買ったパイナップルで喉をいやしながら。今度はバスに乗り換え、バンコク最大のドゥシット動物園へ。
地図を頼りに、当てずっぽうに降りるべき場所を探すほかないのでいささか離れたところで下車する羽目に。おまけに入り口が分からず、しばらく広い塀のまわりを右往左往。やっと入場したときにはへとへとで、しばらく休んでから園内を見てまわる。
遠足だろうか、写生大会だろうか、画材を持った小学生の姿が目につく。
動物園はタイも日本も変わりない。鳥類や蛇の展示が多いのが、ご当地らしい、といえばいえる。もとから動物園のたぐいは好きなほうなので、のんびりと見てまわる。ピーナツをぞんざいに茹でたものが売っていたので、それを買ってサルの檻に一粒ずつ投げ込む。小さな変わった種類のサルは、丁寧に殻をむいて食べている。横を見たら、若者がそれを食べているのが見えた。・・・サルの餌ではなかったようである。
サヤーム・スクエアと呼ばれる繁華街に出て、瀟洒な造りの高層ビル内でカプチーノを飲む。1杯75バーツ。
ブティックに並べられるブランドや、それをのぞく客の服装も日本と変わりないのだが、物価も日本と変わりなかった。