1999/01/30 Relationship

今日も朝は遅い。昼過ぎに宿を出て、トマトサンドイッチ、バナナヨーグルト、チャイのブランチ。こじゃれたメニューは失敗の味がした。美味しいとは言いがたい。

町の中心部はちょっとした広場になっていて、インド人・外国人を問わずいつも暇そうな連中がたまっている。僕はその広場で、日本人の女の子に呼び止められた。彼女はパパンという名のインド人男と一緒だった。三人で、他愛もない雑談をする。カジュラーホーにはいつ来た?日本ではどこに住んでる?・・・そんな感じで。
「何もなくて、だから落ち着くの」と彼女、カオリさんは言った。確かに、遺跡なんて一日で飽きる。その他には、土産物屋とそれほど旨くもないレストランが数軒。僕たちは揃いも揃って、時間を持て余していた。それほど饒舌でもない僕だって、会話には飢えていた。久しぶりの日本語だった。

夕刻、僕は彼女に誘われてパパンの家に招かれることにした。パパンも喜んで僕を案内してくれた。村の外れにある彼の家まで、薄暗い小径を歩いて向かった。

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パパンの家はインドでは裕福の部類にはいるのだろう。居間にはソニーのテレビがあり、ホームドラマやカートゥーンを放映していた。
カオリさんがパパンの母親に呼び寄せられる。食事の用意を手伝うのだという。慣れた風で彼女は奥に入っていった。彼女は既に何度もこの家を訪ねているようだった。
パパンに「僕は?」と訊いてみたけれど、「君はゲストだよ」と言って居間に招く。台所を見たいんだ、と僕は言ってみた。土間ではパパンの母親がカレーを作り、その横でカオリさんがチャパティーを焼いていた。
「インドでは女が食事を作るんだよ。日本でも同じだろう?」
とパパンが言う。 僕は独り暮らしだし、自分で料理するんだ。パパンはそれを聞くと、「そりゃすごいな。僕は何にもできないよ」と笑う。
パパンの家族、それにカオリさんと夕食を食べ、ビールまでご馳走になった。酔いの回ったパパンはカオリさんの肩に手を回し、彼女ははにかむような、困ったような顔を見せた。
「明日は僕の土産物屋においでよ」
パパンが言う。
「ああ、覗かせてもらうよ。今日はありがとう」
僕は彼の家を辞した。

宿に戻ると、同宿の日本人たちがここの主人と焚き火を囲んでいた。北インドの夜は寒い。僕も輪に加わり、焚き火に手をかざした。
パパンの評判は悪かった。温厚な口調ではあるけれど、宿の主人は僕の話を聞くといい顔はしなかった。日本人たちはカオリさんの悪口で盛り上がる。商売上手なインド人と、彼にべったりな日本人女。パパンとカオリさんはそんな風に思われているようだった。

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