すばらしき愚民社会
★★★☆☆
小谷野 敦 (著) 新潮社
「もてない男」で一世を風靡した小谷野敦の近著。メディアリテラシーや階級社会論を交え、知識人も大衆もバカなのだというものすごく乱暴な結論を、ものすごく緻密な論拠で語っている。・・・とはいえあまりにも出典のジャンルや引用が多岐に渡っているにもかかわらず、引用そのものがかなり粗雑であり、結局は学者バカの本になってしまっている。残念。カルチャラル・スタディーズやメディア論には多少の知識がある人間ですら放り投げたくなる。
アカデミズムという内輪での意見交換にしては前述のとおり感情むき出しで粗暴に過ぎる議論ばかりだし、世間一般に対して伝えたい(それこそ著者のいう『賢いつもりの中産階級以上の大衆へ)とするのならば、議論の根拠をもう少し明示すべきだと思う。好きな学者だっただけに、評価は厳しめの一冊。
ちなみにこの本への書評はアマゾンにたくさん載っているが、さすが読者層を反映してレベルの高い批評ばかりで、大変参考になる。やはりみんな同じ感想なのか・・・。