バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉
★★★☆☆
スコット・フィッツジェラルド (著), 村上 春樹 (翻訳) 中公文庫
村上春樹訳のフィッツジェラルド、ということで、僕としては言うことのない組み合わせ。フィッツジェラルドの小説を読むとき、僕はいつも得られた夢の虚しさと得られぬ希望の遠さについて考えさせられる。この本は有名どころを集めた短編集だけれども、やはりすべて、そんないろどりがある。そして若さから成熟に至る過程で誰もが味わう、ある種のやるせなさともがきをこれほど描けた作家は、なかなかいない。
彼の小説じたい、あの有名な一節、このblogでも何度か引用した『流れに逆らう舟のように、力の限り漕ぎ進んでゆく』ことをテーマにしているようにみえてならない。僕がフィッツジェラルドに惑溺するのも、たぶんnそれが一番大きな理由だと思う。