一年半ぶりに夢日記を書いてみる。
仕事の進め方について、一瞬同じプロジェクトに属していたエンジニア氏と話しながら駅の跨線橋を降りていく。薄暗いところを。
そうだな、下北沢みたいなところ。
駅を抜けて、パーティーと商品展示会がいっしょくたになったような会場に着く。人ごみが激しい。
……財布の入ったズボンの後ろポケットが引っ張られている。あれ、と思ったときには、もう財布は抜き取られているではないか。あわてて人ごみの向こうを見ると、そそくさと逃げていく中年の男女が、風貌が上がらずそこら辺の下町にいるような男女が、会場のブースを抜けていくところが見える。
あいつらか!
僕はあわててその後を追おうとした。
そうしたら、誰かがそれを邪魔するように近づいてきて、そして絡まってくる。なんだよこいつは!と思い、必死にふりほどこうとした。
そいつは小柄で線が細くて、短めの刈り上げた髪を分けて、スーツを着て、足が不自由なようで杖をついていた。
こんなやつが、どうして?
こんなやつが
こんなやつが
……
あいつらの一味かよ。
もうスリの二人は遠くに逃げ去ってしまっていた。仕方がないので僕は腹立ち紛れにその杖の男を蹴りつくし、大人しくなったところを片手でかついで、まるでのしイカみたいにかついで会場を出た。その外はちょっとしたターミナル駅のコンコース。
目の前にあった交番にそいつを担ぎ込み、そこにいた警察官に声をかけた。彼は警察官なのに、なぜかガードマンのように水色のシャツを着ていた。「警察の方ですか?」僕が半信半疑で訊ねると、「もちろん」と彼は自信たっぷりに答えた。
よかった。
事情を説明する前に、かついだ杖男を指さして「これを……」と言いかけると、
「ああ、今いっぱいなんだよね〜。悪いけど、向こうの署に行ってくれるかな」
なんだ、そりゃ。
がっくりしながらも、警察官に地図を見せて本署への行き方を教わる。
なんだ、近いじゃないか。
杖男をかついだまま、そこへ向かって歩き出す。と、ベンチが並び人も座り列になった公園の一角で「早いところ財布のカード利用を停止しないとな」ということに思いあたる。僕は無事だったポケットから携帯電話を取り出し、Googleモバイルで「新生銀行」と入力。検索結果のリストには、一発でフリーダイヤルの番号が掲載されたページがでていた。偉いよグーグル!
僕はベンチに杖男を下ろし、電話をかける。
電話はすぐオペレータにつながった。「利用停止をしてほしいんですよ」
それだけの用なのに、
それだけの用なのに、
オペレータは電話の向こうで鳩首協議している様子。なぜなんだ?やっぱりトラブル時はそれ専用の電話番号にダイヤルしなければいけないのか?
いらいらしながら、ふとベンチを見ると、いつの間にか杖男の姿は消えていた。
やれやれ。
やってられないな。
だんだん記憶がぼんやりしてきた。ひょっとすると、財布を盗まれたのは僕の思い違いかもしれないな。
杖男なんて、本当にはいないのかも、しれ、ない……な……
というところで目が覚めた。起きてほんとうに疲れて時計を見ると、真夜中の1時すぎだった。
たまにこういう不条理劇みたいな夢を見るんだけど、だいたいストレスが溜まっているときで、ああ僕のココロの澱みたいなものが出口を求めていたんだなあと、夢を見終わって気づく。なんというか、書き終わってみるとラリったヤク中の妄想小話みたいだ。フロイト的にはどう解釈したらいいもんですかね、とこういう夢を見た後はいつも同じことを思い、僕はため息をつく。
酒すらも飲んでいないなかでこういうお話が紡ぎ出される自分の脳みそに呆れながらも感心して、そろそろちゃんとガス抜きしておこう、と思いました、まる。